宅建試験の合格を目指す皆さん、こんにちは。
試験まで約1ヶ月と迫り、最後の追い込みに励んでいることと思います。今回は、皆さんが試験で学ぶ「税法」の未来を占う、非常に重要なニュースについて解説します。昨日9月19日、大手不動産会社で組織される不動産協会が、来年度（令和8年度）の税制改正に関する要望を発表しました。その中でも、「住宅ローン減税の延長」を最重点項目として、国に強く働きかけていく方針を明らかにしたのです。
なぜ今「税制改正要望」が重要なのか
まず、なぜこのタイミングでの要望活動が重要なのでしょうか。それは、住宅ローン減税をはじめ、不動産に関わる多くの税制上の特例措置が、今年度末（2026年3月末）で適用期限切れを迎えるからです。
もし、このまま延長されなければ、来年度以降に住宅を購入する人々は、この恩恵を受けられなくなってしまいます。そのため、不動産業界は、これらの制度が継続されるよう、税制改正の議論が本格化するこの時期に、国に対して要望を行うのです。
最重点項目「住宅ローン減税」延長を求める3つの理由
不動産協会が、数ある要望の中でも「住宅ローン減税の延長」を最重点項目として掲げるのには、大きく分けて3つの理由があります。
- 子育て世帯の支援（少子化対策）
ご存知の通り、現在の住宅価格や物価は高騰を続けており、特に子育て世帯や若い夫婦が住宅を取得するのは、ますます厳しい状況になっています。協会は、住宅ローン減税を延長することが、こうした世帯の負担を軽減し、安心して子供を産み育てられる住環境の整備につながる、としています。これは、日本の喫緊の課題である少子化対策としても不可欠である、という主張です。 - 内需の柱（経済効果）
住宅投資は、家具や家電の購入、引越し、リフォームなど、多くの関連産業に影響を及ぼす「経済波及効果の高い」分野です。住宅ローン減税によって住宅購入を促進することは、日本経済の内需の柱を支え、活性化させる上で重要であると訴えています。 - 環境性能の促進（カーボンニュートラル）
現在の住宅ローン減税は、省エネ性能の高い住宅ほど、より大きな恩恵を受けられる制度設計になっています。この制度を延長することは、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、環境に配慮した高性能な新築住宅の供給を促進する上でも大きな意味を持つ、と説明しています。
宅建試験の重要テーマ「住宅ローン減税」とは
ここで、試験知識の再確認です。「住宅ローン減税（住宅借入金等特別控除）」とは、年末時点の住宅ローン残高の一定割合（現行は0.7%）を、所得税などから一定期間（現行は最大13年）控除できる制度です。
この制度の控除率や期間、対象となる住宅の要件などは、税制改正によって頻繁に見直されます。宅建士として実務に出た際には、常に最新の情報を把握しておく必要がある、極めて重要な知識です。
事業用・都市開発関連の税制特例も延長を要望
協会は、住宅ローン減税のほかにも、「事業用資産の買換え特例」や「都市再生促進税制」など、主に法人や事業者向けの税制特例についても延長・拡充を要望しています。これらは、企業の投資を促し、都市の国際競争力を高めることを目的としたものです。居住用不動産だけでなく、事業用不動産も含めた業界全体の発展を見据えていることがわかります。
宅建士が税制の「未来」を知る重要性
私たち宅建士を目指す者にとって、今回のニュースは、税制の「未来」を予測する上で重要なヒントとなります。皆さんが今、テキストで学んでいる法律や制度は、決して不変のものではありません。社会情-勢や経済状況に応じて、毎年、あるいは数年ごとに見直されていきます。
業界団体がどのような要望を出し、それに対して国がどう応えるのか。その動向を追いかけることで、単に現在の法律を覚えるだけでなく、「なぜこの制度があるのか」「今後はどう変わっていく可能性があるのか」という、より深いレベルでの理解が可能になります。その視点こそが、顧客に対して長期的な視野に立った的確なアドバイスができる、真のプロフェッショナルへの道を開くのです。
