宅建試験では、民法やそれに関連する法律を基礎として、契約・債権・物権といった権利関係の理解が不可欠です。本記事では、民法の全体構造をわかりやすく整理しながら、試験で問われる要点を丁寧に解説していきます。借地借家法、区分所有法、不動産登記法との関係性も含め、基礎力をしっかり固めましょう。


⸻
民法の構成と権利関係の全体像
民法は、大きく分けて以下の3つの分野に分かれます。
- 総則:意思表示、代理、時効など、財産法に共通する基本原則を規定
- 財産法:契約・債権・物権などの財産に関する権利義務を定める
- 家族法:婚姻、親子、相続など、家族に関する規定を扱う
このうち、宅建試験で最も重要なのが「財産法」に属する債権と物権です。
⸻
契約とは何か?
契約とは、当事者間の「申込み」と「承諾」という意思表示の合致によって成立する法律行為のことです。
例:
A「この土地を2000万円で売ります」
B「はい、買います」
→ このやりとりで契約が成立します。
契約は法律行為の中でも典型的なもので、契約が成立することで権利や義務が発生します。

⸻
債権と債務の関係
契約によって発生するのが債権と債務です。
- 債権:特定の人に対して一定の行為を請求できる権利
- 債務:特定の人に対して一定の行為をする義務
たとえば、売買契約により、買主は売主に対して土地の引渡を請求する権利(引渡請求権=債権)を持ち、売主は土地を引き渡す義務(債務)を負います。
債権は契約の他、不法行為によっても発生します。たとえば、交通事故による損害賠償請求権も債権です。
⸻
物権とは?債権との違いを理解
物権とは、物に対する直接的な支配権であり、全世界に対して主張できる強力な権利です。
- 所有権:物を全面的に支配(使用・収益・処分)できる権利
- 用益物権:他人の土地などを利用できる権利(地上権・地役権)
- 担保物権:債務が履行されない場合の担保となる権利(抵当権・質権・先取特権など)
物権は「誰に対しても主張可能」であるのに対し、債権は「特定の相手にしか主張できない」ことが最大の違いです。
⸻
民法の基本原則も要チェック
民法では、権利義務に関する基本原則が3つ定められています。
1. 私権の公共福祉適合原則
私的な権利も、社会全体の利益に反してはならないという原則。
2. 信義誠実の原則(信義則)
権利の行使や義務の履行は誠意をもって行うべき。
3. 権利濫用の禁止
正当な権利のように見えても、社会的に不当であれば認められない。
このうち「信義則」と「権利濫用の禁止」は判例でもよく使われ、宅建試験でも問われる可能性があります。

⸻
民法と特別法の関係
民法は「一般法」であり、それに対して次の3つの法律は「特別法」として扱われます。
借地借家法
借地や借家に関する権利関係を定めた法律です。特に、建物の所有を目的とした土地の賃借権や建物の賃借人を保護する規定が多く設けられています。
民法と異なり、賃借人保護に厚く、契約期間や更新、正当事由などの制度があります。
区分所有法
集合住宅(マンション)などの区分所有に関する法律です。専有部分と共用部分の区別、管理組合や管理規約の制度などを定めています。
共有とは異なり、区分所有には専有部分の所有と共用部分の共有という複雑な関係が生じるため、特別に法律が設けられています。
不動産登記法
不動産の物権変動について、公示の手段として登記を義務付ける法律です。第三者に権利を主張する(対抗する)ためには登記が必要となります。
⸻
一般法と特別法、実体法と手続法の違い
- 一般法:民法のように、広く私法全般に適用される法律
- 特別法:特定の分野だけに適用される法律(借地借家法など)
- 実体法:権利義務そのものを規定する法律(民法など)
- 手続法:実体法を実現するためのルールを定めた法律(不動産登記法など)
宅建試験では、「特別法は一般法に優先する」という原則が問われることがあります。

⸻
まとめ
今回の内容をまとめると、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 民法は契約・債権・物権を規定する私法の基本法
- 債権と物権は権利の主張範囲が異なる
- 信義則や権利濫用の禁止は判例でも重視される
- 借地借家法・区分所有法・不動産登記法は特別法であり、民法とセットで理解が必要
- 一般法と特別法、実体法と手続法の違いも試験で狙われる
この分野は宅建試験の基本中の基本ですので、まずはここをしっかり押さえ、判例や具体例に結びつけて理解を深めていきましょう。
