宅建試験の合格を目指す皆さん、こんにちは。
今回は、東日本不動産流通機構から発表された、2025年4~6月期の首都圏不動産市場の動向について解説します。この最新データは、現在の市場がいかに複雑で、一筋縄ではいかない状況にあるかを示しています。特に、「中古マンション」と「中古戸建て」で全く逆の値動きが起きており、この「謎」を解き明かすことは、皆さんがプロの不動産アナリストとしての視点を養う上で、またとないケーススタディとなります。
絶好調の「中古マンション」市場 51四半期連続の価格上昇
まず、中古マンション市場の状況です。こちらは、まさに絶好調と言えるでしょう。
成約件数は前年同期比で約3割増と大幅に増加し、3四半期連続でプラスとなりました。一方で、市場に出てくる新規の売り物件数は6四半期連続で減少しています。需要が旺盛なところに供給が追い付いていない、典型的な「売り手市場」です。
この結果、平均成約価格は51四半期連続(!)で上昇を続けています。これは12年以上にわたって価格が上がり続けていることを意味し、中古マンションの資産価値の強さを見せつけています。

活況なのに価格は下落「中古戸建て」市場の謎
次にご覧いただきたいのが、中古戸建て市場です。ここには大きな「謎」が隠されています。
成約件数は、前年同期比で52.0%増という驚異的な伸びを記録しました。市場が非常に活発で、家を買いたい人が殺到している状況がうかがえます。しかし、不思議なことに、平均成約価格は2四半期連続で「下落」しているのです。
「これほど多くの物件が売れているのに、なぜ平均価格は下がっているのか?」この問いこそ、プロの視点が試されるポイントです。

なぜ戸建て価格は下落したのか?その背景を考察
この謎を解く鍵は、「購入されている物件の内訳」にあると考えられます。いくつかの仮説が立てられるでしょう。
一つは、「手頃な価格帯への需要シフト」です。高騰しすぎた中古マンションの購入を諦めた層が、予算内で購入できる中古戸建て市場に流入。活発に売買はするものの、比較的手頃な価格帯の物件に人気が集中したため、全体の平均価格が押し下げられた、というシナリオです。
また、「郊外や築古物件の取引活発化」も考えられます。都心部を離れたエリアや、築年数が経過した物件の取引が増えた結果、平均価格が下がった可能性もあります。

「成約件数」と「成約価格」をセットで見る重要性
今回のデータから学べる最も重要な教訓は、市場を分析する際には「成約件数」と「成約価格」を必ずセットで見なければならない、ということです。
もし、中古戸建て市場の「価格下落」というデータだけを見れば、「市場は冷え込んでいる」と誤った判断をしてしまうかもしれません。しかし、「件数5割増」というデータを合わせ見ることで、「価格は下がっているが、市場の取引自体は非常に活発である」という正しい実態が見えてきます。

宅建士に求められるデータ読解力と提案力
私たち宅建士を目指す者にとって、こうしたデータを読み解き、顧客に的確なアドバイスをすることが使命です。
例えば、中古マンションを売りたいお客様には「今は非常に良い売り時です」と伝えられるでしょう。買いたいお客様には「競争が激しく、価格も高いですが、資産価値は安定しています」と説明できます。
一方、中古戸建てを売りたいお客様には「買い手は多いですが、価格設定は慎重に行う必要があります」と。買いたいお客様には「活発な市場の中から、手頃な物件を見つけられるチャンスかもしれません」といった具体的な提案が可能になります。
試験で学ぶ知識をベースに、こうした生きた市場データを読み解く力こそ、これからの不動産のプロに不可欠なスキルなのです。
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