賃貸住宅の募集活動では、広告の正確性や表示規約の遵守、さらには入居者の適切な審査が求められます。これらは賃貸住宅管理業法や宅建業法だけでなく、景品表示法や表示規約とも関わりがあり、試験でも混同しやすい分野です。今回は「広告制限」と「入居審査」を整理し、試験で問われやすいポイントをまとめます。
広告作成の基本姿勢
入居者募集の広告を作成する際は、以下の点を心掛けます。
- 誇大広告を避け、正確かつ魅力的な広告媒体を作成する
- 物件の条件(住宅金融公庫物件、自治体融資物件など)を明示する
- 間取りや仕様の変更があれば確認する
- 賃料、共益費、敷金、礼金、交通機関、駐車場料金を必ず記載する
- 作成した広告は社内チェックを行い、最終的に賃貸人の確認を得る
👉 現在はインターネット検索が主流(約60%が利用)であり、オンライン広告の正確性がますます重視されています。

広告に関する主な制限
景品表示法・表示規約
- 「新築」「中古住宅」「マンション」「貸家」などの用語は厳格に定義されている
- 距離・所要時間は「80m=徒歩1分」で算出し、起点・着点を明示する
- 面積はメートル法で表示し、畳数表記は1.62㎡以上を前提とする
おとり広告の禁止(表示規約21条)
以下の広告は禁止され、違反すると課徴金や業務停止処分の対象となります。
- 実在しない物件を掲載
- 存在するが取引対象にならない物件を掲載
- 実際に取引意思のない物件を掲載
👉 成約済み物件を削除せず掲載し続ける行為も「おとり広告」に該当します。

宅建業法の誇大広告禁止(32条)
- 実際よりも著しく優良・有利に見せる広告は禁止
- 実務上「おとり広告」や「虚偽広告」もこの規定に基づき処罰対象
宅建業法で禁止される勧誘行為
賃貸住宅管理業者が宅建業者でもある場合、広告・勧誘に関してさらに制限を受けます。
- 重要な事項を故意に告げない、不実を告げる行為(47条1号)
- 威迫して契約させる行為(47条の2第2項)
- 利益保護を欠く行為(将来の環境について断定的判断を示す、十分な検討時間を与えない等)
違反した場合、指示処分や業務停止処分、さらに重い場合は免許取消処分や罰則(懲役・罰金)もあり得ます。

入居審査の重要性
入居審査は「信頼関係破壊の法理」と直結します。
一度契約を結ぶと、法定更新により長期契約化するため、契約前の審査が極めて重要です。
審査項目
- 本人確認:免許証・住民票等
- 職業・年齢・家族構成・年収:在籍証明、源泉徴収票、住民票など
- 連帯保証人の能力
- 反社会的勢力との関係確認:同居人情報やネット調査で確認
- 外国人の場合:パスポート、在留資格、在学証明等
※ 住民票や印鑑証明は発行後3か月以内のものを求めるのが原則です。
入居者決定の主体
- 管理受託方式:最終決定権は賃貸人(オーナー)
- サブリース方式:最終決定権はサブリース業者(転貸人)
👉 入居を断る場合は書面で通知し、提出書類は廃棄せず返却するのが適切です。

【例題】理解度チェック
問1
「新築」と表示できるのは次のどれか。
- 建築後2年経過した未入居物件
- 建築後半年・未入居の物件
- リフォーム済みの中古マンション
- 建築後1年・未入居の物件
解答
正解は「2」。新築とは「建築工事完了後1年未満かつ未使用」であることが条件です。

問2
次のうち「おとり広告」に該当するものはどれか。
- 成約済みの物件を削除せず継続掲載
- 特別依頼による高額広告費の請求
- 賃料を正しく表示している広告
- 設備の写真を一部省略した広告
解答
正解は「1」。成約済み物件の放置掲載は「おとり広告」に当たり、違反となります。

問3
入居審査において最終決定権を持つのは誰か。
- 管理業者(受託方式)
- 賃貸人(受託方式)
- サブリース業者(サブリース方式)
- 2と3
解答
正解は「4」。受託方式ではオーナー、サブリース方式ではサブリース業者が決定権を持ちます。

まとめ
- 広告は景品表示法・表示規約・宅建業法の制限を受ける
- おとり広告や誇大広告は禁止され、違反時は処分・罰則あり
- 入居審査は信頼関係維持のため重要であり、慎重な確認が必要
- 入居者決定権は契約方式によって異なる(受託=オーナー、サブリース=業者)
👉 試験対策では、「広告規制の根拠法」と「入居審査の決定権者」の整理が得点のカギになります。
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