宅建試験では、「法令上の制限」の分野において、「国土利用計画法」および「その他の法令上の制限」に関する知識が毎年のように問われています。特に、事後届出制・事前届出制・規制区域の違いや、その他の法律での許可や届出先などは引っかけも多く、得点差がつきやすい分野です。
この記事では、国土利用計画法の基本から、試験で出題されやすい例外や罰則、その他法令での許可・届出の違いを、例題とともに徹底的に解説します。
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国土利用計画法の目的と届出制度の概要
国土利用計画法の目的は、土地の投機的取引を防ぎ、地価の高騰を抑えることです。そのために、「土地売買等の契約」に対して、一定の場合には都道府県知事への届出や許可を必要とします。
この制度には、以下の3段階があります。
- 事後届出制(基本)
- 事前届出制(監視区域・注視区域)
- 許可制(規制区域)
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事後届出制とは?基本中の基本を押さえよう
対象となる取引とは?
以下の要件をすべて満たす土地売買等の契約が対象です。
1. 一定面積以上であること
2. 対価を得て所有権・地上権・賃借権の設定または移転が行われること(予約含む)
※対価が金銭でなくても、実物不動産(交換)や代物弁済も対象。
面積基準
区域 | 面積基準 |
市街化区域 | 2,000㎡以上 |
市街化区域を除く都市計画区域 | 5,000㎡以上 |
都市計画区域外(準都市含む) | 10,000㎡以上 |
※共有持分の売買では、持分割合に応じた面積で判断します。
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一団の土地取引に注意!
買いの一団では、個別には面積未満でも、まとめ買いで基準を超えたら届出が必要。
売りの一団では、個別の買主が面積未満なら届出不要です。
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届出の手続きと罰則
届出義務者は取得者(例:買主)です。
届出期限は契約締結日から2週間以内に、土地の所在する市町村長経由で都道府県知事へ。
違反すると、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
※ただし、届出違反でも契約自体は有効です。
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届出が不要な例外取引とは?
以下の取引では、事後届出は不要です。
1. 当事者の一方が国・地方公共団体・公社など
2. 民事調停に基づく契約
3. 農地法3条許可が必要な農地のままの移転
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事前届出制とは?どんな区域で必要か
監視区域・注視区域に指定された場所では、契約前に届出が必要になります。
- 注視区域:事後届出と面積基準は同じ
- 監視区域:都道府県の規則でより厳しい基準を設定可能(例:1,000㎡など)
事前届出は契約当事者双方が義務者です。
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規制区域では許可制に!
「規制区域」は最も厳しい区域で、都道府県知事の許可がなければ契約できません。許可が下りなかった場合に契約しても無効になります。
※この場合、買主は都道府県に買い取り請求が可能です。
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事後届出と事前届出の違いを表で整理!
項目 | 事後届出 | 事前届出 |
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届出時期 | 契約後2週間以内 | 契約前 |
義務者 | 取得者のみ | 当事者双方 |
対象区域 | 通常区域 | 注視・監視区域 |
面積基準 | 固定 | 監視区域では独自設定可 |
勧告の内容 | 利用目的の変更のみ | 対価の変更・契約中止も可能 |
勧告期限 | 3週間(延長可) | 6週間 |
例題で理解を深めよう!
問題1:
都市計画区域外で8,000㎡の土地を買ったAは、2週間以内に届出をしていなかった。この契約はどうなるか?
ア.無効である
イ.罰則はあるが契約は有効
ウ.売主にも届出義務がある
エ.土地の登記日から2週間以内に届出が必要であった
正解:イ
→ 届出違反には罰則がありますが、契約自体は有効です。
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その他の法令上の制限の整理
宅建試験で問われやすいのは、「誰に許可・届出が必要か?」です。下記分類で覚えましょう。
① 都道府県知事の許可が必要な法令
- 急傾斜地法
- 土砂災害防止法
- 地すべり防止法
② 状況により知事以外が許可する法令
- 自然公園法:国定→知事、国立→環境大臣
- 河川法:一級河川→国交大臣、二級河川→知事
- 海岸法・森林法・津波防災法(市区域では市長許可)
③ 知事以外の許可が必要な法令
- 文化財保護法(文化庁長官)
- 道路法(道路管理者)
- 港湾法(港湾管理者)
- 生産緑地法(市町村長)
④ 知事への届出が必要な法令
- 土壌汚染対策法(14日前)
⑤ 状況により知事以外へ届出が必要な法令
- 公有地の拡大推進法(市区域→市長、町村区域→知事)
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協定に関する注意点
- 風景地保護協定:公告後に取得した土地所有者にも効力が及ぶ
- 避難経路協定:土地所有者1人でも市長の認可で成立可。ただし2人以上になって初めて効力発生
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まとめ
宅建試験では、以下のポイントを押さえるだけで高得点が狙えます。
- 事後届出制と事前届出制の違い
- 監視区域・注視区域・規制区域の定義
- その他法令での許可・届出先の分類
- 例外規定や罰則の有無
- 引っかけ問題(契約日 vs 登記日など)への対策