宅建試験の合格を目指す皆さん、こんにちは。
現在佳境を迎えている参議院選挙で、「外国人による不動産取得の規制」が大きな争点として浮上しています。都心部を中心とした不動産価格の高騰や、安全保障上の懸念を背景に、与野党から様々な規制強化策が提言されています。この議論の行方は、今後の不動産取引のあり方を大きく変える可能性を秘めており、未来の不動産のプロである皆さんにとって、決して他人事ではありません。
なぜ今「外国人不動産規制」が議論されるのか
この問題が政治の最重要課題の一つとなった背景には、主に2つの理由があります。
一つは、国民の生活を直撃する「住宅価格の高騰」です。円安などを背景に海外からの投資マネーが日本の不動産市場に流入し、都心部のマンション価格などを押し上げています。その結果、「日本人が普通に働いても都心に家を持てない」という状況が生まれ、国民の間に不満や不安が広がっています。
もう一つは、国の安全を守る「安全保障上」の懸念です。すでに自衛隊基地や原子力発電所といった重要施設の周辺土地の利用を規制する「土地利用規制法」は施行されていますが、これは土地の「利用」を事後的に監視するもので、売買そのものを制限するものではないため、不十分だとの指摘が上がっています。

各党が掲げる具体的な規制案を比較する
今回の選挙では、各党が具体的な規制案を公約に掲げています。主なものを比較してみましょう。
- 自民・公明党:まずは実態把握を急ぎ、法令に基づいて厳格に対応する、という慎重かつ現実的な姿勢です。不透明な取引への規制強化を検討しています。
- 国民民主党:投機目的の不動産取得に対し、追加の税負担を求める「空室税」の導入検討を明記。税収を家賃補助などに充てるとしています。
- 日本維新の会:安全保障上重要な区域については、外資による土地取得に「事前許可制」を導入すると訴えています。
- 参政党・日本保守党:より厳格な制限や、安全保障上の脅威となる勢力による買収の「禁止」を掲げています。
このように、「規制強化」という方向性は多くの党で一致していますが、その手法は「税」によるものから「許可制」「禁止」まで様々で、今後の国会での議論の焦点となります。

「空室税」と「事前許可制」が市場に与える影響
特に具体的な「空室税」と「事前許可制」が導入された場合、不動産市場にはどのような影響があるでしょうか。
「空室税」が導入されれば、住むことを目的としない投機的な不動産投資は抑制される可能性があります。一方で、課税を避けるために物件が賃貸に出され、賃貸市場の供給が増えるという効果も考えられます。
「事前許可制」は、より直接的な規制です。指定された区域内の不動産取引において、買主が外国資本の場合、取引前に国の許可が必要となります。これにより、手続きの複雑化や取引期間の長期化は避けられず、宅建士の業務にも大きな影響を与えるでしょう。

現行の「土地利用規制法」との違い
宅建受験者として、提案されている新制度と現行法との違いを理解しておくことが重要です。前述の通り、現行の「土地利用規制法」は、土地の利用方法を事後的に監視・規制する法律です。これに対し、「事前許可制」のような新しい提案は、土地の取得(売買)そのものに、取引前段階で国の関与を求めるものであり、規制のレベルが根本的に異なります。

宅建士に求められる未来の知識と対応
今日の政治の議論は、明日の法律となり、皆さんの未来の仕事のルールとなります。もし、これらの規制が法制化されれば、宅-建士の業務はより複雑かつ重要になります。売買契約の相手方が外国資本である場合、その不動産が規制区域内にないか、許可申請の要否はどうか、新たな税負担は発生しないか、といった点の調査・説明が不可欠となるでしょう。常に最新の法改正の動向にアンテナを張り、国際的な視野を持って業務にあたること。それこそが、これからの時代に求められる宅建士の姿なのです。
コメント