宅建試験の合格を目指す皆さん、こんにちは。
今回は、近年メディアでも取り上げられることが増えている「リースバック」という仕組みと、それに伴うトラブルについて、将来の不動産のプロとして知っておくべき点を解説します。「自宅を売却して現金化し、その後は賃料を払ってそのまま住み続ける」というリースバックは、特に高齢者層にとって魅力的な資金調達手段に見えます。しかし、その裏には大きな落とし穴が潜んでいることもあり、全国でトラブル相談が相次いでいるのが現状です。

「リースバック」の仕組みとは
まず、リースバックの基本的な仕組みをおさらいしましょう。これは、自宅の所有者が不動産業者などの事業者に物件を売却し(売買契約)、同時にその事業者と賃貸借契約を結ぶことで、元の所有者が店子として同じ家に住み続けることができるというものです。まとまった現金を一度に手に入れられるため、老後資金の確保や住宅ローンの完済などを目的として利用されるケースが多く見られます。
なぜ高齢者のトラブルが多発するのか
一見すると便利な仕組みですが、問題はその契約内容の複雑さと、それに伴うリスクです。よくあるトラブルとしては、以下のようなケースが挙げられます。
- 家賃の値上げ「ずっとこの家賃で住める」と思っていたら、契約更新時に家賃が大幅に値上げされ、支払いが困難になり退去を迫られる。
- 物件の転売 事業者がリースバックした物件を第三者に売却。新しい所有者が賃貸契約の更新を拒否し、結果的に追い出されてしまう。
- 困難な買戻し「将来は買い戻せる」という話だったのに、いざ買い戻そうとすると法外な金額を提示されたり、厳しい条件を付けられたりして、事実上買い戻しが不可能になっている。
これらの問題の根底には、契約時に事業者側がメリットばかりを強調し、利用者、特に情報弱者となりやすい高齢者がリスクを十分に理解しないまま契約してしまうという実態があります。

宅建業法上の説明義務と宅建士の役割
ここが宅建受験者にとって最も重要なポイントです。リースバックは「売買契約」と「賃貸借契約」という、まさに宅建業法の本丸と言える2つの契約が一体となっています。宅建士は、それぞれの契約において重要事項説明義務を負います。
売買契約では、買戻しに関する特約があれば、その内容(期間、金額、条件など)を明確に説明しなければなりません。賃貸借契約では、契約期間(普通借家か定期借家か)、家賃や更新の条件などを、相手が「完全に理解できる」レベルで説明する責任があります。特に、契約が「定期借家契約」である場合、原則として契約の更新がないため、「終身住み続けられるわけではない」という事実を明確に伝えることが極めて重要です。

買戻し特約の罠に注意
民法でも学ぶ「買戻し特約」は、リースバックにおいてトラブルの火種となりやすい項目です。この特約があることで、利用者は「いつか家を取り戻せる」と安心しがちです。しかし、その権利を行使するための条件(買戻価額、期間など)が非現実的なものであれば、特約は絵に描いた餅にすぎません。宅建士としては、この買戻し特約の有効性や現実性をしっかりと吟味し、依頼者に正確な情報を提供する法的かつ倫理的な責任があります。

これからの宅建士に求められる倫理観
リースバックのトラブルは、法律知識の有無だけでなく、宅建業者の倫理観が大きく問われる問題です。特に高齢者など、弱い立場にある顧客に対しては、単に契約書を読み上げるだけでなく、その人が本当に契約内容のリスクを理解しているかを確認し、不利な点も包み隠さず説明する姿勢が求められます。知識を正しく使い、顧客を守ることこそ、信頼される宅建士であると思います。試験勉強で得た知識が、将来このような場面で活かされるようにしていきたいです。
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