賃貸不動産の管理や建築工事など、実務では「委任」「準委任」「請負」という契約形態が頻繁に登場します。
一見似ていますが、契約の目的・成果物の有無・責任の範囲が大きく異なります。
試験でも混同しやすいポイントですので、この3つの契約の違いをしっかり押さえておきましょう。
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委任契約とは(民法第643条)
委任契約とは、
「当事者の一方(受任者)が、法律行為をすることを相手方(委任者)に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約」
(民法第643条)
つまり、法律行為を他人に任せる契約です。
具体例
- 不動産の売買契約の代理を頼む
- 弁護士に訴訟を依頼する
- 税理士に確定申告を委託する
これらは、法律上の手続や権利義務を発生させる行為を代行してもらう「委任契約」です。
特徴
- 目的は「法律行為の遂行」
- 成果物の完成は不要
- 無償が原則(民法第648条)だが、有償で定めることも可能
- 受任者は「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」を負う
準委任契約とは(民法第656条)
準委任契約とは、
「法律行為以外の事務の処理を委託する契約」
(民法第656条)
委任との違いは、法律行為ではない行為を委託する点です。
業務の遂行を委ねるが、成果の完成を約束しない契約です。
具体例
- 賃貸管理業務(家賃の集金・入居者対応など)
- 不動産コンサルティング
- システム運用保守・デザイン制作支援
賃貸不動産管理業者がオーナーから管理を受託する契約は、この「準委任契約」に該当します。
特徴
- 目的は「事務処理(行為の遂行)」
- 成果物の完成は不要
- 無償が原則(ただし実務上は報酬あり)
- 善管注意義務が課される
- 結果ではなく「適切な遂行」に対して責任を負う
👉 試験では「管理受託契約=準委任契約」である点が頻出です!
請負契約とは(民法第632条)
請負契約とは、
「当事者の一方(請負人)が、ある仕事を完成することを約し、相手方(注文者)がその結果に対して報酬を支払う契約」
(民法第632条)
つまり、「成果物の完成」が目的となる契約です。
具体例
- 建築工事の施工
- リフォーム工事
- ソフトウェアの開発
- 清掃業務の「完了報告型契約」など
成果(完成物)に不具合があると、請負人は「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」を負います。
特徴
- 成果物の完成が目的
- 有償が原則
- 完成後に報酬を請求できる
- 契約不適合(欠陥)に対して修補・損害賠償義務が生じる
👉 「仕事の完成」があるかどうかが、委任・準委任との最大の違いです。
3つの契約の比較表
| 契約類型 | 民法上の根拠 | 目的 | 成果物の有無 | 契約の性質 | 典型例 | 試験上のポイント |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 委任 | 第643条 | 法律行為の遂行 | 不要 | 無償が原則 | 売買契約の代理、弁護士委任など | 法律行為が目的 |
| 準委任 | 第656条 | 法律行為以外の事務処理 | 不要 | 無償(実務は有償) | 賃貸管理、税務代理補助など | 管理契約=準委任 |
| 請負 | 第632条 | 仕事の完成 | 必要 | 有償 | 建築工事、修繕工事 | 成果物の完成が目的 |
試験で問われやすいポイント
- 賃貸管理契約は何契約か?
→ 準委任契約(法律行為以外の事務処理)です。 - 請負契約との違いは?
→ 請負は「結果責任」、準委任は「行為責任」。 - 弁護士や税理士への依頼は何契約か?
→ 委任契約(法律行為を行う)。 - 成果物があるかどうかを区別基準にする
→ 成果物あり=請負、なし=(準)委任。
実務上の注意点
- 賃貸管理業務(オーナー代行業務)は準委任契約に該当しますが、契約書では「委任契約書」と表記されることもあります。
→ その場合でも、法的性質は「準委任契約」です。 - 請負契約では成果物の引き渡し後に報酬を請求できるため、完成の有無がトラブルの原因になりやすいです。
- 委任・準委任契約は信頼関係を基礎とする契約のため、どちらの当事者もいつでも解除可能(民法第651条)です。
まとめ
| 契約の違い | 委任 | 準委任 | 請負 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 法律行為 | 法律行為以外の事務 | 仕事の完成 |
| 成果物 | 不要 | 不要 | 必要 |
| 報酬 | 無償が原則 | 無償が原則(実務では有償) | 有償が原則 |
| 責任の性質 | 行為責任 | 行為責任 | 結果責任 |
| 例 | 弁護士委任 | 賃貸管理契約 | 建築工事 |
試験対策のひとこと
「法律行為 → 委任」
「法律行為でない事務 → 準委任」
「成果の完成 → 請負」
この3つのキーワードで整理しておくと、迷わず正解できます!
賃貸不動産経営管理士試験では、管理受託契約=準委任契約という点を確実に押さえておきましょう。
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