これまで住居系地域と商業系地域について解説してきました。最終回となる今回は、工業系の用途地域である「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」について詳しく見ていきましょう。

宅建試験合格のポイントについては以下で解説しています。
その他の用途地域については以下です。
準工業地域
準工業地域は、工業系地域の中で最も規制が緩やかで、多様な用途の建物が建築可能な地域です。住宅と軽工業が共存している地域に指定されることが多いです。
建築できる主な建物
- 工場(一部を除く)
- 倉庫、流通施設
- 事務所、店舗(規模制限なし)
- 住宅(戸建て、集合住宅)
- ホテル・旅館
- 遊技場、映画館などの娯楽施設
- 病院、診療所、福祉施設
- 学校、図書館などの文教施設
建築できない主な建物
- 著しく危険性が高い工場(火薬類製造工場など)
- 著しく環境を悪化させる工場(化学工場の一部など)
主な建築の制限
- 建ぺい率:40〜80%
- 容積率:100〜400%
- 特別な高さ制限は設けられていないことが多い
特徴的な点
- 最も多様な用途の建物が建築可能
- 住宅と工場が混在している
- 中小規模の工場が多く立地
- 近年は物流施設やデータセンターなども増加
工業地域
工業地域は、主に工業の利便性を確保するための地域です。準工業地域よりも環境規制が緩和され、より本格的な工場の立地が可能です。
建築できる主な建物
- 工場(危険性の高い一部のものを除く)
- 住宅
- 倉庫、流通施設
- 診療所、保育所
- 事務所
- 店舗、展示場
- 卸売市場
- 自動車修理工場
建築できない主な建物
- 学校、病院
- ホテル・旅館
- 著しく危険性が高い工場
主な建築の制限
- 建ぺい率:40〜80%
- 容積率:100〜400%
- 特別な高さ制限は設けられていないことが多い
特徴的な点
- 本格的な製造業の工場が多く立地
- 住環境への配慮よりも工業の利便性を重視
- 工場関連施設(研究所、社員寮など)も立地可能
- 騒音や振動に関する規制が準工業地域より緩やか
工業専用地域
工業専用地域は、最も純化された工業系地域で、工場と関連施設のみが建築可能です。住宅の建築は原則として認められていません。
建築できる主な建物
- あらゆる工場(危険性の高いものも多くが可能)
- 倉庫、流通施設
- 工場に附属する事務所
- 研究所
- 危険物の貯蔵・処理施設
- 卸売市場
建築できない主な建物
- 住宅
- 商業施設(工場に附属する売店など除く)
- 学校、病院
- ホテル・旅館
- 遊技場などの娯楽施設
主な建築の制限
- 建ぺい率:30〜70%
- 容積率:100〜400%
- 特別な高さ制限は設けられていないことが多い
特徴的な点
- 最も環境規制が緩和されている
- 重化学工業など大規模工場の集積地に指定
- 住宅との混在を避け、工業に特化した土地利用
- 臨海部や工業団地に多く指定されている

工業系地域における環境規制
工業系地域には、用途地域の規制に加えて、以下のような環境関連の規制が適用されることが多いです。この辺はあまり宅建試験には出ないですが、理解を深めるために知っておいて損はないです。
騒音規制
- 準工業地域:比較的厳しい(住宅との混在地域のため)
- 工業地域:中程度
- 工業専用地域:最も緩やか
大気汚染防止
- 地域によらず、大気汚染防止法に基づく規制
- 特定工場には総量規制が適用される場合も
水質汚濁防止
- 排水基準は工場の種類によって異なる
- 地下水汚染防止のための対策が必要
工業系地域の近年の傾向と課題
特に都市部において、以下のような傾向や課題が見られます。
準工業地域での住商工混在
- 工場跡地へのマンション建設による住工混在
- 既存工場と新規住民とのトラブル増加
- 特別用途地区による工業保全の取り組み
工業系用地の減少
- 大都市圏での工業系用地の減少傾向
- 工場の郊外・海外移転
- 物流施設やデータセンターへの転換
工業団地の再生
- 老朽化した工業団地のリノベーション
- スマートファクトリー化への対応
- 環境配慮型の工業地域への転換
まとめ
これまで、用途地域について説明してきました。全てを細かく覚えるのは難しくので、ざっくりのイメージを掴むようにしましょう。
地域の順番を覚えるのは大切です。商業地域と準工業地域はほぼ全ての建物が建てられ、第一種低層住居専用地域に向かって工場、店舗などの制限が厳しくなり、逆に工業専門地域の方に向かうと住居系と店舗への制限が厳しくなります。
日々の暮らしの中で今どんな用途地域にいるのか意識しながら過ごすと自然と覚えることができます。
