宅建試験において物権変動の知識は重要な得点源です。特に「物権変動の時期」と「登記の有無による第三者への対抗可否」は、毎年のように問われるテーマです。
この記事では、物権変動の基本的な考え方から、判例による例外の考慮まで、体系的に理解できるよう解説します。例題も交えて、試験本番に自信をもって臨めるようになりましょう。


物権変動とは?その意味と時期の原則
物権変動とは、所有権や用益物権などの物権が発生・変更・消滅することを言います。契約・相続・時効など、原因はさまざまですが、試験で問われるのは契約に基づく物権変動の時期です。

意思主義の原則
契約による物権変動は「意思主義」に基づき、当事者の意思によってその時期が自由に定められます。特約がなければ、特定物(不動産など)の売買では契約成立時に所有権が移転します。
所有権が移転するタイミングのバリエーション
状況 | 所有権移転の時期 |
---|---|
特定物売買(不動産等) | 契約成立時 |
不特定物売買(ビール100本など) | 物の特定時(判例) |
他人物売買(他人所有の物を売買) | 売主が所有権を取得した時点(判例) |
相続 | 被相続人の死亡時 |
時効取得 | 占有開始時にさかのぼる |
不特定物とは種類と数量のみを指定した物、不動産のように一品一様で代替性のない物は特定物とされます。

物権変動と登記の関係 ~登記は対抗要件~
物権変動は、当事者間では成立しても、第三者に主張するには対抗要件が必要です。これが宅建試験でも頻出する「登記の有無」に関する論点です。
対抗要件の違い
- 不動産の物権変動:登記が必要
- 動産の物権変動:引渡しが必要
例:不動産をAからBが買った場合、登記を備えなければBは、Aから同じ不動産を購入したCに対して対抗できません。

登記がないと対抗できない「第三者」とは?
民法では、不動産の物権変動は登記がなければ第三者に対抗できないと定めていますが、この「第三者」には判例による限定があります。
判例が定義する第三者
- 当事者・包括承継人を除く者で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者
具体例:
- 二重譲渡における後買主C(善意・悪意問わず) → 第三者にあたる
- 売主本人やその相続人 → 第三者にあたらない
悪意(先に買った人がいると知っていた)でも登記がなければ保護されます。したがって、善意無過失要件は不要です。
登記がなくても対抗できる例外的な第三者とは?
一定の者には、登記がなくても物権変動を対抗できます。判例に基づき、例外を以下に整理します。
登記がなくても対抗できる相手 | 具体例 |
---|---|
当事者および包括承継人 | 売主やその相続人 |
無権利者 | 無効登記の名義人 |
不法行為者 | 不法占拠者や毀損者 |
詐欺・強迫による妨害者 | 登記申請を妨害した者 |
背信的悪意者 | 第1買主の代理人が第2買主として自己名義で登記したケースなど |
このような者には登記の有無に関わらず、物権変動を対抗可能です。
転得者が登場した場合の対抗関係
背信的悪意者から譲り受けた第三者(転得者)にはどう対抗するか?
→ 転得者が背信的悪意者でない限り、登記がなければ対抗できない(判例)
つまり、背信的悪意者でも完全に無権利とは限らず、譲渡の効力は有効な場合があるという考え方に基づいています。
実力確認!例題で知識を定着
問題1:次のうち、登記がなければ第三者に対抗できないのはどれか?
ア.不法占拠者
イ.二重売買の後買主(悪意)
ウ.売主の相続人
エ.仮登記をしている者
正解:イ
→ 登記がなければ、たとえ後買主が悪意でも対抗できません。

問題2:物権変動の時期に関する記述で正しいものはどれか?
ア.特定物は引渡し時に所有権が移転する
イ.他人物売買は常に無効である
ウ.時効取得では占有開始時にさかのぼって移転する
エ.相続では登記がなければ所有権は移転しない
正解:ウ
まとめ
物権変動と登記の論点は、宅建試験で毎年問われる重要テーマです。以下のポイントをおさえておきましょう。
- 特定物は契約成立時に所有権が移転(原則)
- 登記は不動産における対抗要件であり、善意・悪意問わず必要
- 「第三者」は正当な利益を有する者に限られる
- 不法占拠者や背信的悪意者などには登記がなくても対抗できる
- 転得者には原則登記がなければ対抗不可(判例あり)
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