宅建試験における「物権」の分野では、占有権や所有権に加え、地上権・地役権などの用益物権が頻出テーマとなっています。これらは一見複雑に感じられますが、それぞれの性質や要件を明確に理解すれば、得点源となる分野です。本記事では、重要ポイントを体系的に解説し、例題を通して理解を深めます。


占有権とは何かを理解しよう
占有権とは、物の事実上の支配状態に基づく権利であり、本権(所有権など)の有無に関係なく成立します。自己のためにする意思をもって物を支配することで取得され、代理人を通じても成立します。
占有権には、現実の引渡し、簡易の引渡し、占有改定、指図による占有移転といった取得方法があり、それぞれ外形上の変化の有無に注目することが重要です。
占有訴権の3つの類型と提起期間
占有権を侵害された場合に認められる訴えは以下の3種類があります。
- 占有保持の訴え(妨害の停止等)
- 占有保全の訴え(妨害の予防)
- 占有回収の訴え(返還請求)
提起期間には注意が必要で、占有回収の訴えは1年以内に限られる点も押さえておきましょう。

即時取得の成立要件とその例外
即時取得とは、動産を取引行為で取得した者が、善意・無過失かつ平穏・公然に占有したときに、所有権を取得する制度です。不動産には適用されず、「占有改定」による引渡しでは成立しない点に要注意です。
例:
Aが所有する時計をBが借りていたが、BがCに売却。Cが善意・無過失で占有を開始したなら、Cは即時取得できます。

所有権と相隣関係の具体的なルール
所有者は所有物を自由に使えますが、隣地との関係では「相隣関係」によって制限されることがあります。例えば、隣地に立ち入る際の通知義務や、枝と根の取り扱いに関する違いなどが定められています。
- 枝は原則、切除の請求のみ可能(一定要件で自ら切除可能)
- 根は、いつでも自ら切除可能
共有に関するルールと行為の分類
共有物の保存、管理、変更は、それぞれ必要な同意レベルが異なります。
- 保存行為:単独で可能(例:不法占拠者への返還請求)
- 管理行為:持分価格の過半数
- 変更行為:全員の同意(例:共有地の売却)
また、共有物はいつでも分割請求ができ、協議が整わない場合には裁判で現物分割、賠償分割、競売による代金分割の方法が取られます。

所有者不明土地・管理不全土地に関する制度
所有者が不明な場合や、所有者がいても適切に管理されていない場合には、裁判所の判断により管理人が選任されることがあります。管理人の権限や報酬、報告義務についても押さえておきましょう。
地上権・永小作権・地役権の比較
項目 | 地上権 | 永小作権 | 地役権 |
---|---|---|---|
処分自由 | あり | 条件付きで可 | なし(要役地に従属) |
対抗要件 | 登記 | 登記 | 登記 |
対価 | 任意 | 必須(小作料) | 任意 |
存続期間 | 任意 | 20~50年(超過不可) | 任意 |
特に地役権は要役地の便益のために承役地を制限する権利であり、地役権の時効取得には継続性と外形上の認識可能性が必要です。
例題で理解をチェック!
例題1:次のうち、即時取得が認められるのはどれか?
ア.父から相続した土地
イ.友人から借りた車を譲り受けた
ウ.善意で中古店から買った腕時計
エ.差押えにより得た動産
正解:ウ
→ 善意・無過失・平穏・公然な取引行為による動産の占有なので即時取得が成立。
例題2:共有物の保存行為に該当するものはどれか?
ア.建物の賃貸借契約の締結
イ.不法占拠者への返還請求
ウ.庭木の伐採
エ.共有地の売却
正解:イ
→ 妨害排除や返還請求は「保存行為」として単独で可能。

まとめ
この記事で解説した内容は、宅建試験で毎年出題される重要テーマばかりです。特に以下の点は確実に押さえておきましょう。
- 占有訴権の分類と提起期間
- 即時取得の成立要件と対象外行為
- 相隣関係の具体的制限(枝と根の違いなど)
- 共有物の保存・管理・変更の違い
- 地役権や地上権の本質と比較
次回は「担保物権」や「債権の譲渡・履行」について、例題付きでわかりやすく解説していきます。
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