宅建試験では、税に関する出題が必ずといってよいほど行われます。中でも「不動産取得税」と「固定資産税」は、受験者が特に注意すべき重要テーマです。これらの税金は、土地や建物の取得や保有に伴って発生し、複雑な特例や軽減措置が多く、試験で混乱しやすいポイントでもあります。
この記事では、不動産取得税と固定資産税の基礎から応用までを、例題付きでわかりやすく解説していきます。
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不動産取得税とは何か
不動産取得税は、土地や家屋を取得したときに一度だけ納める地方税です。取得者が支払う税金であり、課税主体は不動産の「所在地」の都道府県です。
- 売買・交換・贈与などの無償取得も課税対象
- 登記の有無は関係なく、実態としての取得があれば課税対象
- 相続や合併による取得、共有物の分割(一定条件下)は非課税
例題1
不動産取得税の課税主体として正しいのはどれか?
ア.国
イ.不動産所在地の市町村
ウ.取得者の住所地の都道府県
エ.不動産所在地の都道府県
正解:エ

不動産取得税の計算方法と特例
課税標準と税率
- 課税標準は「固定資産課税台帳の登録価格」
- 千円未満切り捨て
- 原則税率は4%、住宅や土地は特例で3%
免税点
- 土地:10万円未満
- 家屋:23万円未満(家屋の種別により異なる)
※1年以内に隣接土地等を取得した場合、合算されるので注意が必要です。

特例の控除
新築住宅:
- 1,200万円控除(認定長期優良住宅なら1,300万円)
- 床面積:50㎡以上240㎡以下(賃貸用は40㎡〜)
中古住宅:
- 最大1,200万円控除(築年数で変動)
- 自己居住・耐震基準適合・50㎡以上240㎡以下
宅地:
- 課税標準を1/2に軽減
例題2
中古住宅に関する不動産取得税の特例を受けるための条件に該当しないものはどれか?
ア.床面積が45㎡
イ.昭和57年以降に新築された住宅
ウ.自己居住用として取得した
エ.耐震基準適合証明あり
正解:ア(50㎡未満は対象外)

固定資産税の基礎と納税義務者
固定資産税は土地や建物などの固定資産を「保有している」人が毎年支払う地方税です。課税主体は「市町村」となります。
- 所有者の住所地ではなく、固定資産の所在地で課税
- 毎年1月1日現在の所有者が納税義務者
- 登記がなくても、所有実態があれば課税対象
固定資産税の課税標準と免税点
課税標準
- 「固定資産課税台帳」の価格を基準に計算
- 総務大臣の評価基準で決定
- 3年ごとに見直し(例外あり)

免税点
- 土地:30万円未満
- 家屋:20万円未満
- 償却資産:150万円未満
※同一市町村内での合算で判断

固定資産税の税率・納期・軽減措置
税率
- 原則:1.4%(市町村条例により変更可)
納期
- 原則:年4回(4月・7月・12月・2月)
課税標準の特例(住宅用地)
- 200㎡以下の部分:課税標準を1/6
- 200㎡超の部分:課税標準を1/3

新築住宅の税額控除の特例
- 原則3年度分の2分の1を控除
- 3階建て以上の耐火建築物:5年度分
- 認定長期優良住宅:それぞれ2年延長可(5年→7年)
※控除対象は120㎡までの部分
固定資産課税台帳と閲覧制度
閲覧と縦覧の違い
制度 | 閲覧制度 | 縦覧制度 |
---|---|---|
対象者 | 納税義務者・借地人等 | 納税義務者 |
対象物 | 自分の資産 | 他人の土地・家屋との比較 |
期間 | 随時 | 毎年4/1〜4/20または最初の納期限日以後 |

固定資産税の計算例(応用)
前提:
- 宅地:300㎡(登録価格1,800万円)
- 住宅:床面積200㎡(登録価格1,000万円)
- 新築住宅、特例適用あり
宅地の税額計算:
- 小規模住宅用地(200㎡分)→ 1,800万円 × (200/300) × 1/6 = 200万円
- その他住宅用地(100㎡分)→ 1,800万円 × (100/300) × 1/3 = 200万円
- 合計課税標準:400万円
- 税額:400万円 × 1.4% = 5.6万円
住宅の税額計算:
- 登録価格:1,000万円
- 税額:1,000万円 × 1.4% = 14万円
- 控除対象:120㎡ → 14万円 × (120/200) × 1/2 = 4.2万円
- 控除後税額:14万円 − 4.2万円 = 9.8万円
合計固定資産税:5.6万円 + 9.8万円 = 15.4万円

まとめ
不動産取得税と固定資産税は、宅建試験において必ず出題される重要テーマです。試験では数字や特例の要件を問う問題が多く、しっかりと記憶しておく必要があります。
特に注意すべきポイントは次のとおりです。
- 不動産取得税の課税主体は「都道府県」、固定資産税は「市町村」
- 新築・中古住宅、宅地ごとの特例内容と要件の違い
- 固定資産税の軽減措置は「課税標準の特例」と「税額控除」の違いに注意
- 控除対象床面積(120㎡や100㎡)の上限も引っかけ問題に多く出題
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