売買契約は宅建試験における超重要テーマの一つです。契約不適合による売主の担保責任や、手付の種類、契約解除の要件、第三者のためにする契約といったポイントは繰り返し出題されており、正確な理解が得点に直結します。
この記事では、売買契約の構造から手付、代金の支払い、担保責任、そして第三者のためにする契約まで幅広く解説し、例題で知識の定着を図ります。


売買契約の基本構造と特徴
売買契約とは、売主が財産権を買主に移転する義務を負い、買主が代金を支払うことを約束することにより成立する「諾成・双務・有償契約」です。
売買契約が成立した時点で権利義務関係が生じるため、目的物の引渡しや代金の支払いが未了でも法的拘束力があります。
【重要】契約書作成費などの売買にかかる費用は、原則として当事者が等しい割合で負担します。

手付の種類と解除のルールを理解しよう
手付には3つの種類がありますが、特別な合意がない限り、判例により「解約手付」として推定されます。
手付の種類 | 意味 |
---|---|
証約手付 | 契約成立の証として交付される |
解約手付 | 一定の条件で契約解除が可能になる手付 |
違約手付 | 損害賠償や違約罰の意味で交付される |

解約手付による解除のルール
- 相手方が契約履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、売主はその倍額を返して契約を解除できます。
- 「履行に着手」とは、客観的に履行に向けた行為が外部から認識できる状態です。
【例】AがBに1,000万円で土地を売却、Bが100万円の手付を支払った場合、売主Aがまだ履行に着手していなければ、Bは100万円を放棄して解除可能。

売買代金と引渡しの同時履行の原則
契約に別段の定めがない限り、売買代金の支払いと目的物の引渡しは同時履行の関係になります。これは「同時履行の抗弁権」として、債務の履行を拒む根拠になります。
代金の支払い場所は原則として引渡しの場所とされ、引渡し時期に期限があるときは、その期限に代金支払いの期限も連動します。
売買契約における売主の義務と契約不適合責任
売主は買主に契約内容に適合する目的物と権利を移転し、対抗要件(登記や登録)を備えさせる義務を負います。
もしも他人の権利を売却した場合、売主はその権利を取得して買主に移転する義務を負います。これができなければ、債務不履行責任を負い、解除・損害賠償の対象になります。

契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)とは?
追完請求権
買主は、目的物が「種類・品質・数量」のいずれかで契約に適合しない(契約不適合)場合、修補・代替物・不足分の引渡しを請求できます。売主の過失は不要です。

代金減額請求権
追完請求に応じない、または追完が不可能な場合などには、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます。
契約の解除・損害賠償請求
契約不適合が重大であれば、契約解除や損害賠償の請求も可能です。
権利の契約不適合にも担保責任が発生
例えば、目的物に地上権・質権などの他人の権利がついていた場合や、他人の所有部分を含んでいた場合も契約不適合として売主の責任を問えます。
買主は、追完請求・代金減額・契約解除・損害賠償を求めることができます。
担保責任の期間制限に注意!
契約不適合を理由とする請求は、原則として買主が不適合を知ったときから1年以内に売主へ通知しなければなりません。
ただし、売主が悪意または重過失であった場合、この期間制限は適用されません。
【例】隠れたシロアリ被害を1年経って発見 → 売主が知らなかった場合は請求不可。知っていた場合は請求可能。

担保責任を免除する特約も有効
契約不適合に関する担保責任を負わないという特約も有効です。ただし、以下のような場合は免責されません。
- 売主が事実を知っていながら告げなかった場合
- 売主が自ら第三者に譲渡または設定した権利によって不適合が生じた場合
第三者のためにする契約とは?
「第三者のためにする契約」とは、契約当事者の一方(諾約者)が、契約の利益を第三者(受益者)に直接取得させることを目的とした契約です。
例:AがBに土地を売却し、代金をCに支払うように約した場合、Cが代金の支払いを請求できる。
- 第三者の承諾によって権利が発生
- 一度発生した権利は当事者の合意でも消滅させられない
- 諾約者は要約者に対する抗弁をもって第三者に対抗可能
実力チェック!例題で理解度を確認
例題1:次の記述のうち正しいものはどれか?
ア.売買契約の手付は、特約がなければ違約手付と推定される
イ.売主が履行に着手した後でも、買主は手付放棄により解除できる
ウ.契約不適合による損害賠償請求は、売主の過失があることが条件
エ.売主が契約時に不適合を知っていた場合、通知期間制限は適用されない
正解:エ
例題2:第三者のためにする契約に関して正しいものはどれか?
ア.第三者が現に存在しなければ契約は無効
イ.受益者が意思表示するまでは、当事者が契約を自由に変更できる
ウ.受益者が権利を取得した後でも契約は自由に解除できる
エ.受益者の意思表示があれば、債務者に直接履行請求できる
正解:エ
まとめ
売買契約に関する出題は、基本的な理解から細かな判例知識まで問われるため、以下の点を確実に押さえましょう。
- 手付の種類と解除のタイミング
- 契約不適合の種類と請求できる4つの権利
- 通知期間の原則と例外
- 担保責任免除の可否
- 第三者のためにする契約の効果とタイミング
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