宅建試験の合格を目指す皆さん、こんにちは。
新築マンションの価格高騰を受け、中古マンション市場が活況を呈しています。しかし、その一方で、特に築年数が経過したマンションにおいて、「大規模修繕工事」をめぐるトラブルが増加しているという、見過ごせない問題が浮上しています。数千万円、時には億単位にもなる「修繕積立金」が、一部の悪質な業者や、私利私欲に走る関係者に狙われているのです。この問題は、皆さんが試験で学ぶ「区分所有法」や「管理組合」の知識が、いかに現実の資産価値に直結しているかを示す、生きた教材です。
なぜ今「大規模修繕」トラブルが問題になるのか
まず、この問題がなぜ今、注目されているのか、その背景を理解しましょう。一つは、新築価格の高騰により、築10年以上の比較的購入しやすい中古マンションに人気が集まっていることです。しかし、これらの物件は、国土交通省のガイドラインで12~15年周期が目安とされる、まさに「大規模修繕」の時期を間近に控えているケースが多くなります。
さらに、近年の建築資材や人件費の高騰により、修繕工事の費用そのものが膨らんでいます。多額の費用が動くからこそ、そこに付け入る隙が生まれやすくなっているのです。

住民間の対立「利益相反」という落とし穴
一例をあげますと千葉県のある大規模マンションで起きたトラブルがあります。修繕委員会を主導していた住民の一人が、実は元建設会社のOBで、自身の古巣の関係会社に工事を発注させようと、強引に話を進めていたというのです。
これは、典型的な「利益相反」の事例です。本来、区分所有者全員の利益のために行動すべき管理組合や修繕委員会のメンバーが、特定の個人の利益のために動いてしまう。このような事態は、管理組合の機能不全を招き、マンション全体の資産価値を大きく損なう原因となります。

専門家が警鐘を鳴らす「積立金を狙う業者」の手口
専門家は、特に戸数が多い大規模マンションや、投資用物件が多く住民の管理への関心が低いマンションで、トラブルが起きやすいと指摘しています。そうしたマンションでは、住民たちが長年積み立ててきた大切な「修繕積立金」を狙う業者が、管理組合に取り入り、業者にとって都合の良い(つまり、利益率の高い)工事内容や工法に“誘導”していくケースがあるのです。住民の無関心は、悪質な業者の格好の餌食となってしまう危険性をはらんでいます。

宅建士が理解すべき「管理組合」と「修繕積立金」の重要性
ここが、宅建受験者の皆さんが最も意識すべきポイントです。マンションの価値は、部屋の広さや内装、立地だけで決まるわけではありません。そのマンションの「管理組合」が健全に機能しているか、そして「修繕積立金」が計画通りに積み立てられ、適切に運用されているかが、資産価値を長期的に維持する上で極めて重要になります。
宅建試験で学ぶ「区分所有法」では、管理組合の役割や集会の決議要件などが定められています。また、「長期修繕計画」の作成や、それに基づく修繕積立金の徴収も、マンション管理の根幹をなす要素です。中古マンションの仲介を行う際には、これらの「管理状況」に関する事項が、重要事項説明の対象となります。

「管理を買え」という視点―未来の不動産のプロとして
不動産業界には、「マンションは管理を買え」という有名な格言があります。今回のニュースは、まさにこの言葉の重みを物語っています。どんなに素晴らしい立地や眺望のマンションでも、管理組合が機能不全に陥り、適切な修繕が行われなければ、建物は劣化し、資産価値は下落の一途をたどるでしょう。
未来の不動産のプロである皆さんの役割は、単に物件のスペックを説明することではありません。そのマンションの「管理」という、目に見えにくいけれど最も重要な価値を正しく評価し、顧客に伝えること。それこそが、顧客の大切な資産を守り、信頼を勝ち得るための鍵となるのです。
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