宅建業を始めるには、「営業保証金」について理解しておく必要があります。宅建試験でも頻出の論点なので、この記事でしっかり押さえておきましょう!
宅建試験合格のポイントについては以下で解説しています。
営業保証金とは?
営業保証金とは、宅地建物取引業者(宅建業者)が事務所を設置する際に、供託所(法務局)に供託しなければならない金銭のことです。これは、宅建業者と取引をした相手が損害を受けた場合に備えて、弁済を確保するための制度です。
営業保証金を供託するタイミング
宅建業の免許を取得した後、「宅建業を開始する前」に供託を完了し、供託した旨を免許権者に届け出なければなりません。この届出をしないと、営業開始できません。
営業保証金を供託する場所
営業保証金の供託を行う場所は、宅建業者の主たる事務所の最寄りの供託所になります。支店を主たる事務所と違う都道府県に増設した場合においても、主たる事務所の最寄りの供託所です。

営業保証金の額
営業保証金の額は、事務所の数によって決まっています。
主たる事務所:1,000万円
従たる事務所:1カ所につき500万円
例えば、本店1カ所と支店2カ所を設置する場合、
1,000万円(本店)+ 500万円 × 2(支店)= 2,000万円
の営業保証金が必要になります。
営業保証金の評価額とは?
供託する営業保証金の評価額は、原則として金銭で供託する場合は額面通りです。しかし、有価証券で供託する場合は、政令で定める割合で評価されます。例えば、国債は額面の100%、地方債は額面の90%といった具合です。
営業保証金の届出をしない場合の処置
宅建業者は、営業保証金を供託した後、免許権者に届出をしなければなりません。この届出を怠ると、「宅建業の免許は持っているが、営業を開始できない」という状態になります。
免許の日から3ヶ月以内に宅建業者より供託した旨の届出がない場合、免許権者は届出をすべき旨の催告をしなければなりません。
催告から1ヶ月以内に宅建業者より供託した旨の届出がない場合、免許権者は、免許を取り消すことができます。ただし必ず取り消されるわけではありません。

営業保証金の還付
還付額
営業保証金の還付額は供託している営業保証金の額が限度になります。供託金が2,000万円の場合、取引相手方が仮に3,000万円の損害を被っても2,000万円が還付されるのみです。もちろん、宅建業者が残りの1,000万円の支払いが免除になるわけではないので、宅建業者は別の所から費用を払う必要があります。
還付対象の取引
還付される対象は、宅建業者と宅地建物の取引した場合に被った損害に限られます。建設業者や広告業者への支払い代金、給与の未払い代金等には当てられません。
また、宅建業者通しの取引の場合も対象になりません。
営業保証金が不足した時の処置
取引相手に対する弁済が行われた場合、宅建業者は不足分を補充しなければなりません。不足の通知を受けてから2週間以内に不足した金額について追加供託を行い、その旨を2週間以内に免許権者に届け出る必要があります。不足を生じた時からではありません。
営業保証金を取り戻す方法
宅建業者が営業を廃止する場合や、免許を更新せず任期満了になった場合、免許を取り消された場合ら供託した営業保証金を取り戻すことができます。
取り戻しの手順
1.公告
官報に「営業保証金を取り戻す」旨を公告(6カ月以上の期間を設ける)
2.債権者への弁済手続き
期間内に債権者が申し出た場合は、弁済する
3.還付請求
期間満了後、供託所に対して還付請求し、営業保証金を取り戻す

保管替えとは?
営業保証金を供託した供託所の管轄が変わる場合、「保管替え」もしくは「二重供託」という手続きを行います。
例えば、本店を東京都から大阪府に移転する場合、供託所も変更しなければなりません。このとき、現金のみを供託していた場合、旧供託所で保管替えの請求を行います。
現金以外の有価証券等も供託していた場合は新しい供託所に営業保証金を供託し、以前の供託所へ返還の請求を行います。この場合は、前述の公告は不要です。保管替えが完了したら、免許権者に届出が必要です。
営業保証金についての説明義務
営業保証金を供託している宅建業者は、取引の相手方に対し、供託している供託所の名称および所在地について、契約前までに説明を行わなければなりません。ただし、取引の相手方も宅建業者の場合は、説明不要です。
まとめ
営業保証金について、重要なポイントを整理すると以下の通りです。
✅ 営業保証金は取引の弁済を確保するための制度
✅ 主たる事務所1,000万円、従たる事務所500万円が必要
✅ 不足が生じたら通知を受けてから2週間以内に補充が必要
✅ 取り戻すには官報公告をし、還付請求を行う
✅ 本店移転時には保管替えもしくは二重に供託し取り戻すことが必要
宅建試験では「保証協会との違い」や「供託手続きの流れ」などが問われることが多いので、しっかり復習しておきましょう!