前回は第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、そして田園住居地域について解説しました。今回は残りの住居系地域について、詳しく見ていきましょう。
前回の解説については下記で説明しています。
商業系、工業系地域については下記で解説しています。
また、宅建試験のポイントについては下記で解説しています。
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第一種住居地域
住居系の用途地域の中では、比較的緩やかな規制となっている地域です。住居の環境を守りながら、生活利便施設なども立地可能です。
建築できる主な建物
- 住宅(戸建て、集合住宅)
- 店舗、事務所(3,000㎡以下)
- 小規模工場(作業場の床面積が50㎡以下)
- ホテル・旅館
- 病院、診療所
- 学校、図書館などの教育施設
主な建築の制限
- 建ぺい率:30〜60%
- 容積率:100〜300%
- 大規模な商業施設や工場は建築不可
特徴的な点
- 日用品販売店舗や飲食店の立地が可能
- 住環境を害さない程度の小規模な工場も許可
- 中規模までの事務所ビルの建設が可能

第二種住居地域
第一種住居地域よりもさらに規制が緩和され、より多様な用途の建物が建築可能な地域です。
第一種住居地域に加えて建築できる主な建物
- パチンコ店、カラオケボックスなどの遊技場
- マージャン屋、射的場
- 自動車修理工場
- 商業施設(床面積10,000㎡以下)
- 倉庫業を営む倉庫
建築の制限
- 建ぺい率:30〜60%
- 容積率:100〜400%
- 危険性や環境を悪化させる恐れのある工場は建築不可
特徴的な点
- 比較的大規模な商業施設の立地が可能
- 娯楽施設の立地制限が緩和
- 住居地域でありながら、多様な用途に対応

準住居地域
住居地域の中で最も規制が緩やかで、幹線道路沿いなどに指定されることが多い地域です。
主な建築可能施設
- 第二種住居地域で認められている全ての建物
- 自動車修理工場(規模制限なし)
- 給油所、ガソリンスタンド
- 倉庫
- 一定規模以下の工場
建築の制限
- 建ぺい率:40〜60%
- 容積率:100〜400%
- 著しく危険性が高い工場や環境を悪化させる工場は建築不可
特徴的な点
- 幹線道路沿いに指定されることが多い
- 自動車関連施設の立地に適している
- 住居と商業・業務機能が調和した地域

用途規制の段階的な緩和について
住居系の用途地域は、以下のような段階的な規制緩和の構造になっています:
- 低層住居専用地域(第一種→第二種)
- 中高層住居専用地域(第一種→第二種)
- 住居地域(第一種→第二種→準住居)
この順序で、徐々に:
- 建築可能な用途が増加
- 商業施設の規模制限が緩和
- 工場などの立地制限が緩和
されていきます。

住居系用途地域のまとめ
これらの地域に建設できる施設の重要なポイントをまとめます:
商業施設を建設する場合
- 規模に応じた用途地域の選択が必要
- 第二種住居地域以上であれば、比較的大規模な店舗も可能
- 住居地域では、周辺住民への配慮が特に重要
事務所を建設する場合
- 第一種住居地域以上であれば、一般的な規模の事務所は建築可能
- 大規模なオフィスビルは、住居系以外の商業地域などを選択する必要あり
小規模な工場・作業場を建設する場合
- 住居系の中では準住居地域が最も規制が緩い
- 環境への影響が少ない施設であることが条件になることがある
- 実際に建築となると騒音・振動対策は必須
まとめ
住居系用途地域は、その地域の特性や立地条件に応じて、適切な規制レベルが設定されています。特に、第一種住居地域から準住居地域にかけては、住環境の保護と各種施設の立地ニーズのバランスを取るための重要な制度となっています。
建築したい施設の用途や規模に応じて、適切な用途地域を選択しなければなりません。また、同じ用途地域であっても、地区計画など地域、自治体による上乗せ規制が設けることも可能です。
