賃貸住宅の運営や管理において、建築設備の知識は欠かせません。特に「機械設備」は、入居者の安全・衛生・快適性に直結するため、賃貸不動産経営管理士試験でも頻出のテーマです。今回は換気設備から給水・給湯・排水、さらに電気・ガス・昇降機まで幅広く解説します。
リンク
換気設備の種類と特徴
換気は「自然換気」と「機械換気」に分けられます。
- 自然換気:温度差や風圧を利用し、経済的だが安定性に欠ける。
- 機械換気:ファンを使って安定的に換気できるが、電気代などのコストが発生。
機械換気には以下の方式があります。
- 第一種機械換気:給気・排気を両方機械で行い、最も安定。電気室や機械室に利用。
- 第二種機械換気:給気は機械、排気は自然。清浄な空気が必要な工場などに採用。
- 第三種機械換気:排気を機械で行うため負圧となり、汚染空気の流入を防止。台所や浴室に多い。

給水設備とその方式
給水設備は、水道本管から住戸へ安全に水を供給するための仕組みです。方式は大きく分けて直結方式と受水槽方式があります。
- 直結直圧方式:水道本管の圧力のみで給水。低層建物向け。
- 直結増圧方式:ポンプを併用し、中高層建物にも対応。
- 高置水槽方式:屋上の水槽から重力で供給。安定性が高く大規模建物で採用。
- 圧力タンク方式:ポンプで加圧し給水。小規模マンション向け。
- 加圧給水方式:ポンプ直送で給水。最近のマンションで多い。
注意点として、クロスコネクションは禁止されています。飲料水と雑用水を直接つなぐと、汚染の危険があるためです。

給湯設備の仕組み
給湯方式は以下の3種類です。
- 局所給湯方式:各所に個別給湯器を設置(例:ガス瞬間湯沸器)。
- 飲用給湯方式:短い配管で直接供給。
- 中央給湯方式:建物全体に大規模な給湯システムを設置。
また、給湯器にはガス式と電気式があり、
- ガス給湯器は瞬間式・貯湯式・バランス釜に分類。
- 電気給湯器にはエコキュートやエネファームなど最新型も普及。

排水設備の基礎
排水は「汚水・雑排水・雨水」に分類され、合流式と分流式で処理方法が異なります。
- トラップの役割:封水によって下水ガスや害虫の逆流を防止。
- サイホン式トラップ(S・U・Pトラップ)と非サイホン式トラップ(ドラム・わんトラップ)に分類されます。
- 二重トラップは禁止:排水圧の異常で逆流の危険があるため。
さらに、マンションではスペース効率の高い単管式や、省スペースを実現する特殊継手排水システムが採用されるケースもあります。

電気設備の基礎知識
電気は建物の心臓部ともいえる設備です。
- 需給契約:
- 低圧(50kW未満、100V/200V)
- 高圧(50kW以上2,000kW未満、6,000V)
- 特別高圧(2,000kW以上、20,000V以上)
- 配線方式:
- 単相2線式(100V専用)
- 単相3線式(100V・200V対応)
- ブレーカーの種類:
- アンペアブレーカー(過電流防止)
- 漏電ブレーカー(ELB)
- 感震ブレーカー(地震時に遮断)
試験では「電圧・電力量の区分」や「配線方式」が問われやすいポイントです。

ガス設備の要点
ガスは「都市ガス」と「LPガス」に分かれます。
- 都市ガス:空気より軽い → 警報器は天井付近に設置。
- LPガス:空気より重い → 警報器は床付近に設置。
最近のガスメーター(マイコンメーター)は、異常時に自動で供給を遮断する機能を持っています。

昇降機設備(エレベーター)
エレベーターは駆動方式で分類されます。
- 油圧式:最下階に機械室を設置。低層建物向け。
- ロープ式:最上階に機械室を設置。中高層向け。
- マシンルームレス型:最近の主流。省スペースで導入可能。
保守契約はフルメンテナンス契約とPOG契約に分かれます。さらに、建築基準法に基づき定期報告(年1回程度)が義務付けられている点も重要です。

まとめ
機械設備は、居住者の生活に直結するため、試験でも実務でも極めて重要な分野です。特に出題されやすいのは次のポイントです。
- 換気の種類と第一〜第三種換気の特徴
- 給水方式の違い(直結方式と受水槽方式)
- 給湯器の種類と特徴
- トラップや通気管など排水設備の仕組み
- 電圧区分(低圧・高圧・特別高圧)
- 都市ガスとLPガスの違い
- エレベーターの駆動方式と保守契約
数字や仕組みの違いを「なぜそうなるのか」という背景とともに覚えることが、得点力アップにつながります。
リンク
コメント