区分所有法は、分譲マンションの管理や専有部分・共用部分の権利関係を規律する法律であり、宅建試験でも頻出分野です。民法の特別法としての位置づけもあり、用語や手続きの正確な理解が得点に直結します。
この記事では、区分所有法の基本から、管理組合、集会、規約の効力、義務違反者への対応、建物の復旧・建替えまで網羅的に解説し、重要ポイントを例題で確認できる構成にしました。


区分所有法とは?専有部分と共用部分の違いを正確に押さえる
区分所有法の目的と適用範囲
区分所有法は、マンションなどの一棟の建物を区分して所有するための特別法です。各所有者が独立して所有する部分を専有部分、共同で使用する部分を共用部分といいます。
専有部分と共用部分の区別
- 専有部分:構造上・利用上独立して使用できる部分(例:301号室など)
- 共用部分:階段、廊下、エレベーターなど、全体または一部の所有者が共同で使用する部分
・法定共用部分:当然に共用される部分(廊下など)→登記不可
・規約共用部分:専有部分を規約で共用に指定(例:集会室としての101号室)

敷地と敷地利用権
敷地には、法定敷地(建物が建っている土地)と規約敷地(駐車場など規約で敷地とした土地)があります。敷地利用権は、専有部分と分離して処分できませんが、規約で分離処分可と定めることができます。

管理組合と管理者の役割とは?
管理組合の構成
マンションの管理は、すべての区分所有者から構成される管理組合が行います。区分所有者になると自動的に構成員となり、脱退はできません。
管理者の選任と権限
- 規約に別段の定めがなければ、集会の普通決議(過半数)で選任
- 区分所有者以外も選任可能
- 管理者は、共用部分・敷地の保存、集会の決議実行、訴訟代理などを行います
管理組合法人の設立
- 区分所有者及び議決権の各4分の3以上の集会決議
- 登記を行うことで法人化され、理事・監事が選任されます
集会の手続きと決議要件
招集と議決権の行使
- 管理者または理事(法人の場合)が招集
- 区分所有者の5分の1以上で請求可
- 通知は会日より1週間前までに発送(期間変更可)

決議の種類と要件
決議事項 | 要件 |
---|---|
普通決議(共用部分の軽微変更等) | 区分所有者+議決権の各過半数 |
特別決議(建替え・義務違反者処分等) | 区分所有者+議決権の4分の3以上 |
建替え決議 | 区分所有者+議決権の5分の4以上 |
占有者(賃借人等)には議決権はありませんが、利害関係ある場合は意見を述べられます。

義務違反者への対応方法
区分所有者の義務違反
区分所有者が他の所有者の共同利益に反する行為を行った場合、次の対応が可能です。
- 行為の停止・除去請求:裁判不要(普通決議)
- 使用禁止請求:裁判所に提訴+特別決議(4分の3)+弁明機会
- 区分所有権の競売請求:裁判所に提訴+特別決議(4分の3)
占有者(賃借人)の義務違反
占有者による義務違反に対しても、賃貸借契約の解除および退去を請求可能です。これも裁判による訴訟+特別決議が必要です。
建物の復旧と建替えのルール
小規模滅失と復旧
- 建物の価格の2分の1以下が滅失:普通決議で復旧可能
- 決議までは個人での復旧も可能、決議後は不可
大規模滅失と復旧
- 建物の2分の1超の滅失:特別決議が必要(4分の3以上)
- 反対者には時価での買い取り請求が可能
建替えの決議
- 区分所有者+議決権の5分の4以上で建替え決議
- 決議に基づいて非参加者に対し、専有部分等の時価での売渡請求が可能
- 通知:2か月前までに、説明会:1か月前までに開催

実力確認!区分所有法の例題で理解を深めよう
例題1:次のうち、区分所有法上の共用部分に関する記述として誤っているものはどれか?
ア.階段や廊下は法定共用部分に該当する
イ.101号室を集会室とする場合は規約共用部分となる
ウ.共用部分の共有持分は登記簿上に記載される
エ.規約で共用部分の所有者を管理者とすることができる
正解:ウ
例題2:次のうち、建替え決議に必要な集会の定足数として正しいものはどれか?
ア.区分所有者および議決権の各3分の2以上
イ.区分所有者および議決権の各4分の3以上
ウ.区分所有者および議決権の各5分の4以上
エ.区分所有者の過半数および議決権の3分の2以上
正解:ウ
例題3:次のうち、使用禁止請求に該当しない要件はどれか?
ア.共同の利益に反する行為であること
イ.訴訟によって請求すること
ウ.区分所有者の普通決議があること
エ.事前に弁明の機会を与えること
正解:ウ(使用禁止請求は特別決議が必要)

まとめ
区分所有法は、専有部分と共用部分の概念から始まり、管理組合の設立、集会の決議方法、義務違反者への措置、建物の復旧・建替え手続きまで、複数の論点が複雑に絡み合っています。宅建試験では、特に以下のポイントを押さえると有利です。
- 専有部分と共用部分の違いと定義、規約による共用化の可能性
- 管理組合・管理者の権限と管理組合法人の要件
- 集会の招集・決議要件(普通決議・特別決議・建替え決議)
- 義務違反者への請求方法とそれに必要な決議・訴訟要件
- 小規模滅失と大規模滅失、建替えの決議手続きの違い
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