借地権は、宅建試験の権利関係分野でも非常に重要なテーマです。借地借家法により保護される借地権のルールは、契約期間の設定や更新、建物買取請求権、そして対抗要件など、幅広い視点から理解が求められます。
この記事では、試験によく出る論点を長めの解説と例題で整理しながら、借地権の基本から実務上の注意点まで網羅的に説明します。


借地権とは何か?法的性質と適用範囲
借地権とは、建物所有を目的とした地上権または土地の賃借権を指します。したがって、無償の使用貸借契約や青空駐車場のように建物を建てない前提の利用は借地借家法の適用外となります。
- 地上権:物権
- 土地賃借権:債権(宅建試験ではこちらが出題されやすい)
また、一時使用目的の借地契約には、以下のような借地借家法の保護規定は適用されません。
- 存続期間の最低保障
- 契約更新のルール
- 建物再築の制限
- 建物買取請求権
- 定期借地権に関するルール

借地権の存続期間のルールと民法との違い
借地権には最低保障される存続期間が30年とされています。
- 期間の定めがない場合 → 30年
- 30年未満で定めた場合 → 自動的に30年とみなされる
- 30年以上で定めた場合 → その通りの期間が有効(例:40年、50年)
※注意:建物所有を目的としない土地利用(例:駐車場)は借地借家法の適用外であり、民法の「最長50年」が適用されます。

借地権の更新とその要件
借地権は次のいずれかにより更新されます。
- 合意による更新
→ 建物がなくても更新可能(契約自由の原則) - 法定更新
→ 以下のいずれかに該当し、借地権者が使用を継続しているとき
- 契約期間満了時に借地人が更新を請求
- 建物所有のまま使用継続している
ただし、地主(借地権設定者)が正当な事由に基づき遅滞なく異議を述べた場合は、更新されません。

更新後の存続期間
- 最初の更新 → 20年
- 2回目以降の更新 → 10年
※これより長い期間を定めた場合は有効。短い期間は無効です。

借地権者の建物買取請求権とは?
契約更新がされず、借地契約が終了した場合、借地権者は地主に対し建物の買取りを請求することができます。この請求を「建物買取請求権」といいます。
- 建物が現存している必要あり
- 建物代金の支払いと土地の明渡しは同時履行の関係
ただし、借地権者に重大な債務不履行(賃料不払いなど)があり、地主が正当な理由で契約を解除した場合には、建物買取請求権は行使できません(判例)。

借地権の対抗要件とは?登記・建物登記・掲示のルール
借地権は第三者に対抗するために、一定の対抗要件が必要です。これは特に、土地の所有者が変わった場合などに、借地権の存在を守るために重要です。
① 借地権の登記(民法上の原則)
- 借地権を登記すれば、第三者に対して対抗可能
- しかし、地代を受け取る貸主(賃貸人)には登記協力義務がないため、実務上は困難
② 借地上の建物登記(借地借家法の特則)
- 借地権者が、借地上に登記された自己名義の建物を所有していれば、借地権も第三者に対抗可能
この特則は、土地を見るだけで他人名義の建物が建っていれば、借地権が存在することが推測されるという合理性に基づいています(現地検分の原則)。
【注意点】
- 登記は借地権者本人名義でなければならない(例:長男名義では無効)
- 登記の種類は、表題登記・保存登記いずれでもよい
- 複数筆の土地がある場合、登記がない筆には対抗力は及ばない
建物が滅失した場合の対抗力維持(掲示による保護)
建物が災害などで滅失した場合、一定の条件を満たせば2年間は借地権の対抗力が維持されます。
【条件】
- 滅失前に建物登記がされていた
- 建物の滅失日・旧建物の特定事項・再築の意思を、土地上の見やすい場所に掲示した
この「掲示による保護」はあくまで暫定的な対抗要件であり、滅失から2年間が有効期間です。
実力チェック!例題で理解を深めよう
例題1:借地権の存続期間に関して正しいものはどれか?
ア.期間の定めがなければ20年とされる
イ.30年未満で定めても、その通りに有効となる
ウ.30年以上の定めは無効である
エ.30年未満で定めた場合でも、30年とみなされる
正解:エ
例題2:借地権の対抗要件に関する次の記述のうち、正しいものはどれか?
ア.建物の登記があれば、名義は誰でもよい
イ.建物の表題登記では対抗力は得られない
ウ.借地上に登記された自己名義の建物があれば対抗力がある
エ.借地権の登記があれば、必ず第三者に対抗できる
正解:ウ
例題3:借地権者が建物を滅失した後の対抗力について、正しいものはどれか?
ア.滅失した建物の登記があれば永続的に対抗力が維持される
イ.掲示をすれば、滅失から1年間対抗力が維持される
ウ.建物登記をしていない場合でも、掲示により対抗力が得られる
エ.滅失後、掲示をすれば2年間は対抗力が維持される
正解:エ

まとめ
借地権は、契約内容だけでなく、法定の保護や対抗要件の有無によって大きく権利の効力が変わる重要なテーマです。以下のポイントを中心に復習しましょう。
- 借地権は建物所有目的の地上権または土地賃借権
- 最低存続期間は30年。更新時は20年→10年
- 建物登記で借地権の対抗力を得られるが、自己名義でなければ無効
- 滅失後も掲示により2年間は対抗力が維持される
- 建物買取請求権は契約終了時の強力な保護だが、債務不履行解除時には認められない
コメント