賃貸不動産経営管理士試験では、民泊(住宅宿泊事業法)や住宅確保要配慮者への支援(住宅セーフティネット法)に関する問題も出題範囲に含まれます。特に、近年の社会的背景や国の施策と直結する分野であり、法制度の趣旨や具体的な仕組みを正しく理解することが重要です。今回は、両法律のポイントを整理し、例題を交えながら解説していきます。
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住宅宿泊事業法(民泊新法)の概要
住宅宿泊事業法は、いわゆる「民泊」に関する法律です。旅館業法に基づく許可を受けずとも、届出制によって住宅に宿泊者を受け入れられる仕組みを整えています。
- 目的:観光需要への対応と、健全な事業運営の確保(1条)
- 住宅宿泊事業:年間180日以内の有償宿泊(2条3項)
- 住宅宿泊事業者:都道府県知事等への届出制(2条4項)
- 住宅宿泊管理業者:国土交通大臣登録制(2条7項)
- 住宅宿泊仲介業者:観光庁長官登録制(2条10項)
特に「家主居住型」と「家主不在型」の違い、そして管理業務を委託しなければならないケース(居室数が5超/家主不在型)が頻出ポイントです。

住宅宿泊事業者の義務(11条2項など)
届出をした事業者には、以下の義務が課されています。
- 宿泊者の衛生確保(清掃・人数制限)
- 宿泊者の安全確保(避難経路・防災設備)
- 外国人観光客への案内(多言語対応)
- 宿泊者名簿の備付け(提出義務あり)
- 周辺住民への生活環境配慮(騒音防止説明)
- 苦情対応
- 標識の掲示
- 都道府県知事への定期報告
※管理業務を委託した場合、①〜⑥は免除されますが、⑦標識掲示・⑧定期報告は免除されない点に注意。

住宅宿泊管理業者の登録と義務
国土交通大臣登録制で、更新は5年ごと。主な義務は以下です。
- 管理受託契約前後の書面交付(33条・34条)
- 信義誠実義務(29条)
- 名義貸し禁止(30条)
- 誇大広告・不当勧誘の禁止(31条・32条)
- 再委託の禁止(35条)
- 帳簿の備付け、標識掲示(38条・39条)

住宅セーフティネット法の概要
高齢者や低所得者など「住宅確保要配慮者」の入居を支援する制度です。
- 目的:要配慮者の居住安定の確保(1条)
- 住宅確保要配慮者:高齢者・低所得者・被災者・障害者・子育て世帯など(2条1項)
- 登録制度:賃貸住宅を登録し、入居受け入れを表明できる(8条)
- 入居拒否の制限:登録住宅では「要配慮者であること」を理由に入居を拒否できない(17条)
ただし、「家賃滞納のおそれがある」など、個別具体的な事由での拒否は可能です。

学習のポイント
- 民泊=住宅宿泊事業法(180日上限・届出制)
- 要配慮者支援=住宅セーフティネット法(登録制度・入居拒否制限)
- 両者は「住宅の供給と利用の多様化」を背景に成立している点を押さえる

【例題1】住宅宿泊事業法
次の記述のうち、正しいものはどれでしょうか。
- 住宅宿泊事業は年間365日まで可能である。
- 家主居住型であっても居室数が6室なら管理業者への委託が必要である。
- 管理業務を委託した場合、定期報告義務も免除される。
答え:2
→年間上限は180日。定期報告義務は委託しても免除されません。

【例題2】住宅セーフティネット法
登録住宅の入居拒否に関する次の記述のうち、誤っているものはどれでしょうか。
- 高齢者であることを理由に入居を拒否してはならない。
- 低収入で家賃滞納のおそれがあることを理由に入居を拒否できる。
- 要配慮者であることを理由に一律で入居を拒否できる。
答え:3
→「要配慮者であること」を理由とした一律拒否は禁止されています。

まとめ
- 民泊(住宅宿泊事業法)は「届出制」「180日上限」「管理委託義務の要件」がポイント
- 住宅セーフティネット法は「要配慮者支援」「登録制度」「入居拒否制限」が重要
- 試験では「委託義務が免除される場合」「入居拒否が許される場合」など、例外規定の理解が合否を分けます。
賃貸不動産経営管理士試験対策として、条文ベースの暗記にとどまらず、背景や目的とあわせて整理しておきましょう。
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