これまで住居系の用途地域について解説してきましたが、今回は商業系の用途地域である「近隣商業地域」と「商業地域」について詳しく見ていきましょう。商業活動を行う上で重要となるこれらの地域の特徴や規制内容を理解することで試験対策を行っていきましょう。
宅建試験のポイントについては以下で解説しています。
住居系、工業系の用途地域の説明は以下です。

近隣商業地域
近隣商業地域は、その名の通り、近隣住民の日常生活を支える商業施設を主体とした地域です。住宅地に隣接することが多く、生活利便性を確保する役割を果たしています。
建築できる主な建物
- 店舗、事務所(床面積制限なし)
- 住宅(戸建て、集合住宅)
- ホテル・旅館
- 遊技場(パチンコ店、ゲームセンターなど)
- 映画館、劇場
- 病院、診療所
- 小規模な工場(作業場の床面積150㎡以下)
建築できない主な建物
- 危険性の高い工場
- キャバレーなどの風俗営業施設
- カラオケボックスなどの深夜営業施設(一部制限あり)
建築の制限
- 建ぺい率:60〜80%
- 容積率:200〜400%
- 日影規制:住居系地域と同様に適用される場合が多い
特徴的な点
- 住宅と商業施設が混在している
- 日常の買い物や飲食、サービス施設が集積
- 幹線道路沿いなどに指定されることが多い
- 中小規模の店舗が中心

商業地域
商業地域は、商業系用途地域の中で最も規制が緩やかで、多様な商業活動が可能な地域です。都市の中心部や駅前などに指定されることが一般的です。
建築できる主な建物
- 大規模な店舗、百貨店、ショッピングセンター
- オフィスビル、高層ビル
- ホテル・旅館
- 映画館、劇場、遊技場などの娯楽施設
- 風俗営業施設(一部制限あり)
- 住宅(高層マンションも可)
- 小規模な工場(作業場の床面積150㎡以下)
建築できない主な建物
- 危険性の高い工場
- 特に環境を悪化させる恐れのある施設
建築の制限
- 建ぺい率:60〜80%
- 容積率:200〜1300%(地区によって大きく異なる)
- 高さ制限:特に設けられていないことが多い(ただし斜線制限あり)
特徴的な点
- 高容積率による高層建築が可能
- 多様な商業・業務機能の集積
- 夜間営業の制限が少ない
- 住宅も建築可能(都市型住宅の立地)

住居系地域と商業系地域の違い
住居系地域と商業系地域の主な違いは以下の通りです:
用途の制限
- 住居系:住環境保護のため、商業施設の種類や規模に制限
- 商業系:多様な商業活動が可能で、規模制限も緩やか
容積率
- 住居系:100〜400%程度
- 商業系:200〜1300%(特に商業地域は高い)
騒音・営業時間規制
- 住居系:深夜営業の制限が厳しい
- 商業系:24時間営業も可能な施設が多い
日影規制
- 住居系:厳しい日影規制
- 商業系:近隣商業地域では一部適用、商業地域では適用外のことが多い
商業系地域での立地選定のポイント
業種による適地
- 日用品店舗:近隣商業地域が適している
- 大規模商業施設:商業地域が適している
- 飲食店:どちらも可能だが、営業時間に注意
コスト面の比較
- 賃料・地価:一般的に商業地域 > 近隣商業地域
- 建築コスト:容積率や高さ制限の違いで変動
集客特性
- 近隣商業地域:地域住民が主な顧客
- 商業地域:広域からの集客が可能
よくある誤解と注意点
誤解1:商業地域なら何でも建てられる
実際には一部の工場や危険物を扱う施設は制限されています。また、地区計画などの上乗せ規制が設けられていることも多いです。
誤解2:住宅は建てられない
商業系地域でも住宅の建築は可能です。特に都心部の商業地域では、高層マンションの建設も多く見られます。
注意点:防火地域との関係
商業地域は多くの場合、防火地域に指定されており、耐火建築物などの厳しい防火基準が求められます。
まとめ
商業系用途地域は、都市の活力を生み出す重要な役割を持っています。近隣商業地域は地域の日常生活を支え、商業地域は都市の中心的な商業・業務機能を担っています。
用途地域の規制に加えて、地区計画や建築協定などの上乗せ規制も可能であることに留意しましょう。
