賃貸不動産経営管理士試験では、「不動産登記制度」と「不動産証券化」が出題範囲に含まれています。どちらも不動産取引の基盤となる重要な制度であり、登記の機能や証券化の仕組みを理解しておくことが得点につながります。本記事では、試験対策として重要な部分を整理し、例題を交えて解説します。
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不動産登記制度の機能
不動産登記には以下の4つの機能があります。
- 土地の単位確定
土地は「筆」という単位で権利の対象を明確化します。建物は個別に独立しているため、この処理は不要です。 - 物権変動の公示
所有権移転や抵当権設定などの変動を外部から認識できるようにし、円滑な取引を可能にします。
※ただし不動産登記には「公信力」はありません。 - 権利取得の対抗要件
民法177条により、不動産に関する物権変動は登記をしなければ第三者に対抗できません。 - 権利の推定
登記名義人が権利者であると推定されます(登記の推定力)。

登記記録と登記簿
- 登記記録は「一不動産一登記記録」の原則により、土地や建物ごとに作成されます。
- 構成は以下の通りです。
- 表題部:所在、地目、構造、床面積など物理的状況
- 権利部(甲区):所有権に関する事項(保存登記、移転登記など)
- 権利部(乙区):所有権以外の権利(抵当権、地上権、賃借権など)
試験で狙われやすいのは「甲区=所有権」「乙区=所有権以外」という区別です。

土地の価格の4種類
公的に発表される土地価格には4つの種類があります。
- 公示価格(国土交通省・土地鑑定委員会/毎年1月1日基準 → 3月公表)
- 基準地標準価格(都道府県知事/毎年7月1日基準 → 9月公表)
- 相続税路線価(国税庁/毎年1月1日基準 → 7月公表/公示価格の約80%)
- 固定資産税評価額(市町村長/3年ごと評価替え/公示価格の約70%)
→「誰が決めるのか」「基準日」「公表時期」「公示価格との割合」は必ず暗記ポイントです。

不動産証券化の基礎
不動産証券化とは、不動産を証券に結びつけ、投資対象として運用できる仕組みです。
- REIT(リート)
- Jリート(上場、不動産投信法が根拠、換金性高い)
- 私募リート(非上場、換金性低いが市場の影響少なめ)
- 私募ファンド
- TMKスキーム(資産流動化法に基づく特定目的会社)
- GK-TKスキーム(合同会社+匿名組合契約)
- 資金調達の形態
- デット(借入・社債:安全性高・リターン低)
- エクイティ(出資:リスク高・リターン高)
- ノンリコースローン
→ 融資の返済責任を対象不動産に限定する仕組み(事業破綻時に個人資産まで責任追及されない)。

アンバンドリング(業務分離)
不動産証券化では、業務を分離するのが一般的です。
- アセットマネジメント(AM)
投資家の立場で資金運用の計画・実行を行う(金融商品取引法に基づく投資運用業の登録が必要)。 - プロパティマネジメント(PM)
実際の建物管理・賃貸運営を行う。報告、調査・提案、改修計画、所有者交代対応など。

【例題1】不動産登記制度
次の記述のうち正しいものはどれでしょうか。
- 不動産登記には公信力がある。
- 区分建物の共用部分については民法177条が適用される。
- 不動産登記を経た者は、権利者として推定される。
解答:3
→ 登記の推定力により、登記名義人が権利者と推定されます。公信力は認められていません。

【例題2】土地の価格
次の土地価格に関する記述のうち誤っているものはどれでしょうか。
- 公示価格は国土交通省の土地鑑定委員会が決定する。
- 基準地標準価格は毎年1月1日時点で評価される。
- 相続税路線価は公示価格の約80%を目安に設定される。
解答:2
→ 基準地標準価格は毎年7月1日時点で評価されます。

【例題3】不動産証券化
次の説明のうち正しいものはどれでしょうか。
- Jリートは非上場で換金性が低い。
- GK-TKスキームは合同会社が営業者となり匿名組合契約を結ぶ仕組みである。
- ノンリコースローンは、借入の返済に個人資産も充てなければならない。
解答:2
→ GK-TKスキームは合同会社(GK)が営業者となり、投資家と匿名組合契約(TK)を結ぶ方式です。

まとめ
- 不動産登記制度は「対抗要件」「推定力」「公信力なし」がポイント
- 土地の価格は「誰が決めるか」「基準日」「公表時期」「公示価格との割合」を整理して暗記
- 不動産証券化はREIT・私募ファンド・資金調達の形態(デット/エクイティ)、ノンリコースローン、AMとPMの業務分担が出題頻出
試験対策では、単なる用語の暗記ではなく、制度の趣旨と実務での使い分けを理解することが合格への近道です。
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