宅建試験の合格を目指す皆さん、こんにちは。
今回は、首都圏、特に東京の不動産市場がいかに歴史的な局面を迎えているかを示す、衝撃的なデータについて解説します。ある調査によると、2025年3月には東京都の単身者向けマンションの平均賃料が初めて10万円を突破し、さらに東京23区の中古マンション価格(70㎡換算)も1億円の大台を超えました。なぜ今、賃貸と売買の両方でこれほど価格が高騰しているのか。その背景にある複合的な要因を理解することは、未来の不動産のプロを目指す皆さんにとって不可欠な知識です。
ついに大台へ 東京の賃貸・売買市場の現状
まず、最新の市場状況を正確に把握しましょう。単身者向けの平均賃料は、東京都全体で10万円台に、23区に絞ると11万円台後半に達しています。これは、多くの単身者にとって家賃が収入の大きな部分を占めることを意味します。一方、売買市場では、東京23区のファミリー向け中古マンションの掲載価格が8,000万円を超え、実際の成約に近いとされる70㎡換算の実勢価格は1億円を突破しました。もはや「都心で70㎡のマンションは1億円」が現実的な目安となり、この高値圏が定着しつつある状況です。

なぜ価格と賃料は上がり続けるのか 5つの複合要因
この歴史的な価格高騰は、決して単一の理由で起きているわけではありません。主に以下の5つの要因が複雑に絡み合っています。
- 供給の減少 建築コストの高騰や人手不足により、特に23区内では賃貸住宅の新規着工が3年連続で減少しています。
- 都心回帰の加速 コロナ禍が落ち着き、企業で出社日数が増えたことで、職住近接を求める単身者が再び都心に戻ってきています。
- 建築コストの上昇 資材価格や人件費はコロナ以前と比較して約40%も上昇しており、これが新築・中古を問わず物件価格に反映されています。
- 緩和的な金融環境 住宅ローン金利は依然として歴史的な低水準にあり、これが購入需要を下支えしています。
- 海外投資マネーの流入 円安を背景に、海外の投資家が都心の不動産を「割安」と判断し、一棟買いなどの形で積極的に投資を行っています。
これら「供給減」「需要増」「コスト増」の三重苦に、金融環境と海外からの投資が加わり、価格が下がりづらい構造を生み出しているのです。

宅建士が顧客に提案するべき「賢い物件探しのヒント」
このような厳しい市場環境の中、顧客にどのようなアドバイスができるでしょうか。宅建士には、画一的な提案ではなく、工夫を凝らした戦略的な視点が求められます。具体的には、「時期」「場所」「広さ」の3つの軸で条件を見直すことを提案できます。
- 時期をずらす 繁忙期(1~3月)を避け、閑散期(5~9月)に交渉することで、家賃交渉やフリーレント(一定期間の家賃無料)の獲得がしやすくなります。
- 場所を半歩ずらす 再開発で注目される駅そのものではなく、その隣駅や徒歩10分圏内など、少しエリアを広げることで、価格上昇が緩やかな穴場物件が見つかる可能性があります。
- 広さを調整する 価格高騰が著しい80㎡超の物件だけでなく、50~60㎡台など、少しコンパクトな物件も視野に入れることで、予算に合う選択肢が広がります。
取引の立場別に見る具体的なチェックポイント
さらに、顧客の立場に応じて、より具体的なアドバイスが必要です。
借り手には 更新時期を閑散期に設定する交渉や、定期借家契約で長く住む代わりに賃料を抑えてもらうといった提案が考えられます。
買い手には 将来の金利上昇リスクに備え、変動金利と固定金利を組み合わせた「ミックスローン」の検討や、将来の負担増を見越した「管理費・修繕積立金」の改定予定の確認を促すことが重要です。
投資家には エリアごとのワンルーム規制などを考慮しつつ、賃貸需要が堅調な1LDK~2LDKの築浅物件や、再開発周辺エリアを狙うといった具体的な戦略が求められます。


「高値の定着」を前提としたプロの視点
今回のデータが示すのは、東京の不動産市場が「短期的に価格が大きく下がることは考えにくい」という新しいフェーズに入ったということです。宅建士の役割は、価格が下がるのを待つことではなく、この「高値安定」の市場を前提として、いかに顧客の利益を最大化し、リスクを最小化するかを考えることです。試験で学ぶ知識は、そのための土台となる思考力と応用力を養うためにあります。現実の市場動向と結びつけながら、生きた知識として吸収していきましょう。
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