不動産は「同じものが2つとない」資産であるため、その価格をどう決めるかという問題がつきまといます。宅建試験では、地価公示法に基づく「地価公示」や、不動産鑑定士による「鑑定評価」がたびたび出題されます。
この記事では、地価公示制度と不動産鑑定評価の違い、価格形成要因、評価手法などを整理し、過去問でもよく問われる論点を例題付きで詳しく解説していきます。
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不動産の特徴と価格評価の必要性
不動産は株式のように市場価格が明示されていないため、取引の基準となる価格指標が必要です。
- 同じ構造や面積でも、立地や方位、周辺環境で価格が異なる
- 流動性が低く、即時に換金できるものではない
- 市場が非公開で相場形成が難しい
こうした背景から、公的な「価格の目安」が必要となり、地価公示と鑑定評価制度が存在します。
地価公示制度の目的と手続き
地価公示は、土地取引価格の指標を公に示す制度で、適正な価格での売買を促すことを目的とします。以下がその流れです。
地価公示の6つの手順
- 標準地の選定(公示区域内)
- 不動産鑑定士2名以上が鑑定
- 鑑定評価書の提出
- 土地鑑定委員会の審査と判定
- 官報による価格の公示
- 関係市町村での閲覧
標準地の価格は「正常な価格」と呼ばれ、建物や権利関係の影響を排除した純粋な土地の価格です。

地価公示の効力
- 指標としての効力:一般の土地取引で参考にする努力義務
- 規準としての効力:不動産鑑定・収用補償等では準拠義務あり

不動産鑑定評価の基本と評価の流れ
不動産鑑定評価は、「不動産鑑定評価基準」に基づき、不動産鑑定士が価格を算定する仕組みです。
鑑定評価の6ステップ
- 対象不動産の確定(所在地、形状など)
- 権利の確定(所有権、借地権など)
- 価格時点と価格の種類の確定
- 価格形成要因の分析
- 最有効使用の判定(最も価値が高くなる使い方)
- 評価手法の適用
不動産の価格の種類とその意味
- 正常価格:合理的な市場で成立すると予測される一般的な価格
- 限定価格:市場参加者が限定される特定の取引に基づく価格(例:隣地買収)
- 特定価格:再生企業など特殊条件下での価格
- 特殊価格:文化財・公共施設など市場性のない不動産の価格

価格形成要因の3分類
- 一般的要因:人口、経済情勢、物価など国全体の影響
- 地域要因:駅距離、商業施設、インフラ整備など地域特性
- 個別的要因:形状、道路付け、方位など物件固有の特性
鑑定評価の三手法をマスター
- 原価法(積算価格)
再調達原価から減価修正して価格を算出。主に新築建物の評価に使用。
※熟成度加算あり - 取引事例比較法(比準価格)
類似不動産の実際の取引事例を比較。
※事情補正・時点修正に注意 - 収益還元法(収益価格)
将来得られる純収益を現在価値に割り戻す。
・直接還元法:一定の純収益÷還元利回り
・DCF法:証券化対象不動産の評価に使用(期中収益+復帰価格)

実践例題で理解度チェック
例題1:地価公示に関する記述のうち正しいものはどれか?
ア.標準地は都道府県知事が選定する
イ.標準地の鑑定は1人の不動産鑑定士が行う
ウ.標準地価格は任意で参考にすればよい
エ.標準地の価格は原則として建物・借地権等を考慮しない
→ 正解:エ
例題2:次のうち、鑑定評価において収益還元法が使用できないケースは?
ア.賃貸マンション
イ.商業ビル
ウ.文化財に指定された建物
エ.自己使用を前提とした住宅
→ 正解:ウ(市場性を有しない不動産)

まとめ
地価公示と不動産鑑定評価は、宅建試験で繰り返し問われる「価格」に関するテーマです。以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。
- 地価公示は適正な取引を促すための価格の公示制度
- 公的取引や補償には規準としての効力がある
- 不動産鑑定評価には明確な評価手順と三つの手法がある
- 価格の種類や形成要因、評価手法は定義を正確に暗記
- 過去問や例題で定着を図ることが合格への近道
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