賃貸不動産経営管理士試験では、「個人情報保護法」に関する問題が出題されることがあります。
入居者や所有者の個人情報を扱う場面が多い不動産管理業務において、この法律の理解は必須です。
この記事では、個人情報保護法の基本的な内容と、賃貸管理業務での実務的な留意点を整理して解説します。
個人情報保護法とは
「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」は、個人の権利利益を保護することを目的として制定された法律です。
正式名称は「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)で、2003年に成立し、以後何度も改正されています。
この法律は、個人情報を取り扱うすべての事業者(=個人情報取扱事業者)に対して、
適正な取扱い・管理・利用・提供に関する義務を課しています。
個人情報の定義
個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、次のいずれかに該当するものです。
- 氏名、生年月日、住所など、その情報によって特定の個人を識別できるもの
- 個人識別符号(マイナンバー、運転免許証番号、顔認識データなど)が含まれるもの
したがって、入居申込書や契約書に記載される「氏名・住所・電話番号」などは、すべて個人情報に該当します。
個人情報取扱事業者とは
個人情報を業務上取り扱う者は、個人情報取扱事業者として法の規制対象になります。
不動産会社・賃貸管理会社・サブリース業者なども該当します。
個人情報取扱事業者には、次のような義務があります。
- 利用目的の特定と明示
- 安全管理措置の実施
- 第三者提供の制限
- 開示・訂正・削除などの請求への対応
- 苦情処理体制の整備
利用目的の特定と明示
個人情報を取得する際には、利用目的をできる限り特定し、本人に明示することが義務づけられています。
例えば、賃貸管理会社が入居申込者の個人情報を取得する場合、次のような明示が必要です。
「入居審査・契約手続・賃料請求・建物管理のために利用します」
利用目的を本人に知らせずに情報を取得することは、原則として認められません。
個人情報の第三者提供
本人の同意なく個人情報を第三者に提供することは、原則禁止です。
ただし、次の場合は例外として提供が認められます。
- 法令に基づく場合
- 人の生命・身体・財産の保護のために必要がある場合
- 公衆衛生・児童の健全育成のために特に必要がある場合
- 国や自治体の法令事務に協力する場合
また、第三者に提供する際は、提供先・目的・提供する情報の項目などを本人に通知・公表する必要があります。
安全管理措置
個人情報が漏えい・滅失・改ざんされないようにするため、
安全管理措置を講じることが義務づけられています。
具体的には、
- 従業者への教育・監督
- 紙媒体の施錠・保管
- システムへのアクセス制限
- パスワード管理・暗号化
といった対策が求められます。
不動産管理会社では、入居者情報を紙やパソコンで保管することが多いため、特に注意が必要です。
開示・訂正・利用停止の請求
本人は、自分の個人情報について以下の請求を行う権利があります。
- 開示請求:どのような個人情報が保有されているか確認できる
- 訂正請求:誤りがあれば修正を求められる
- 利用停止請求:不正な取得・利用に対して使用停止を求められる
事業者は、これらの請求に適切に対応しなければなりません。
不動産管理業務における注意点
1. 入居申込書の管理
入居者の氏名・住所・勤務先・年収などは個人情報です。
審査が終了した不要な書類は、適切に廃棄する必要があります。
2. 家賃滞納者への対応
保証会社やオーナーへの報告は、契約上の必要範囲内で行うことが重要です。
本人の同意なしに情報を広く提供することはできません。
3. オーナー情報の取扱い
所有者の氏名・連絡先も個人情報に該当します。
物件紹介や広告などで誤って開示しないよう注意が必要です。
例題で確認
問題:
賃貸管理会社が入居希望者の個人情報を第三者に提供する場合、次のうち正しいものはどれでしょうか?
- 本人の同意がなくても、管理会社の判断で提供できる。
- 法令に基づく場合などを除き、本人の同意が必要である。
- 一度契約した入居者の情報は、本人の請求があっても開示不要である。
- 利用目的を明示しなくても、正当な業務であれば取得できる。
▶ 正解:2
解説:
個人情報の第三者提供は、原則として本人の同意が必要です。
ただし、法令に基づく場合などの例外があります。
また、本人からの開示・訂正請求には応じる必要があります。
まとめ
- 個人情報とは、生存する個人を特定できる情報のことです。
- 不動産管理業者は個人情報取扱事業者に該当し、法に基づく義務を負います。
- 利用目的の特定・安全管理・第三者提供の制限が特に重要です。
- 本人の同意なしに情報を提供することは原則禁止。
- 実務では、入居申込書・オーナー情報・滞納対応時の取扱いに注意が必要です。

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