近年、都市部を中心に住宅価格や土地価格が急上昇しており、従来型の住宅ローンでは「月々の返済が重すぎる」「将来負担が不安」という声が増えています。そんな中、注目されているのが 残価設定型住宅ローン。このローンは将来の売却を前提とし、「残価(将来売却価格の予想額)」をあらかじめ設定することで、毎月の返済額を抑える仕組みです。本記事では、その仕組みからメリット・デメリット、適している人・注意点までを整理してご紹介します。
残価設定型住宅ローンの仕組み
- 住宅購入時に「○年後にはこの家を〇〇円で売れるはず」という 残価(将来想定価格) を設定
- 月々の返済は “借入額 - 残価部分” の元本と利息のみ
- 最終的に住宅を売却 → 売却代金で残価分を清算
- 死亡時やライフプランの変化で「売却 → 清算」ができる設計も
つまり、普通の 35年ローンのように「借入全額を返済する」のではなく、「将来の売却で残価部分を精算する」前提で月々の支払いを軽くする、やや特殊なローン形式です。
なぜ今、このローンが注目されているのか
- 都市部を中心に土地・住宅価格が高騰
- 過去数十年で、住宅取得時の借入金額は大きく増加(たとえば平均で約 2 倍に)
- 年収に対する借入倍率(返済負担率)も上昇傾向
- 長期ローン(たとえば 35 年を超える 50 年ローンなど)を選ぶ世帯も増加
- しかし、将来的に退職後も返済が残る不安や、月々の返済の重さへの懸念
こうした背景により、月々の返済を抑えつつ“借りやすく”購入できる手段として、残価設定型住宅ローンが新たな選択肢として浮上しています。
残価設定型のメリット
✅ 月々の返済負担を大きく軽減
借入額から残価を差し引いた分だけ返済するため、普通の住宅ローンに比べて月々の返済額が抑えられることが大きなメリットです。特に、共働き世帯や子育て世代など、手取り収入が限られる家庭では大きな魅力。
✅ 将来のライフスタイル変化に対応しやすい
転勤、家族構成の変化、子どもの独立、老後など、将来的なライフスタイルの変化で 「売って別の住宅へ住み替える」 可能性のある人には、柔軟に対応できる住宅ローンです。
✅ 相続・万が一時のリスクを軽減
ローン完済のために退職後や高齢期まで返済を続ける必要がなく、死亡時などに売却して残価を整理できる設計なら、将来の返済リスクを抑制できます。
✅ 住宅の質とメンテナンス意識が高まる
残価を維持するには、建物の耐震性・耐久性・定期メンテナンスが重視されるため、住宅の質を長期的に保つ意識が働きやすくなります。
残価設定型のデメリット・リスク
⚠ 売却価格が想定より下がるリスク
もし将来、実際の売却価格が設定した残価を下回った場合、その差額を誰が負担するかは契約内容によって異なります。
- 銀行やローン会社が差額を請求する可能性
- 住宅メーカーなどが保証する場合もあるが、条件が厳しい可能性
- この点が 最大のリスク です。
⚠ 対象物件や条件が限定される
残価を設定できるのは、
- 土地の資産価値が高い場所
- 建物が耐震・耐久性など高水準
- 定期的なメンテナンスをきちんと行う
といった条件をクリアする住宅に限られます。
そのため、すべての物件でこのローンが使えるわけではありません。
⚠ “終の住処”には不向き
最終的に売らない、ずっと住み続けたい と考えている人には、このローンは向きません。売却を前提にしているため、住み続けるケースでは「月々の支払いは少ないけれど、将来の出口が不透明」ということにもなりかねません。
⚠ リフォーム・増改築の自由が制限される可能性
残価保証や想定価値を維持するためには、住宅の状態を保つことが大前提。大規模リフォーム、間取り変更、趣味重視の改修などは、将来の売却価値にマイナス影響を与えやすく、制限がかかる可能性があります。
このローンはどんな人に向いているか?
以下に当てはまる人には、残価設定型住宅ローンは有力な選択肢になり得ます:
- 都市部など、土地・住宅価値が落ちにくい地域で住宅購入を検討している
- 転勤・転職・家族構成の変化などで住み替えの可能性がある
- 共働きで、月々の返済額は抑えたいが資金計画を堅実にしたい
- 住宅の耐久性や将来のメンテナンスにきちんと対応できる自信がある
一方で、終の住処を探している人、自由にリフォーム・改築したい人、将来売る予定がない人にはあまり向いていません。
導入時に確認しておきたいチェックポイント
- 契約書で「売却価格が残価を下回った場合の責任」が明確か
- 住宅の耐震性・耐久性、将来のメンテナンス計画・負担が明示されているか
- 将来のライフプラン(転勤、家族構成、住み替えなど)との整合性
- 想定売却時の市場動向、地域の住宅需要の見通し
- 他の住宅ローン(長期ローンや固定金利ローン)とのコスト比較
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まとめ:賢く使えば“賢い住宅購入の選択肢”に
残価設定型住宅ローンは、もともと“月々の返済プレッシャー”や“高額借入”に悩む人向けに考案された、ある意味で柔軟性の高いローン商品です。
ただし、そのメリットを享受するには、「売却前提」「将来のライフスタイルの変化」「住宅の資産価値維持」といった条件を きちんと見据えること が前提となります。
もしご自身や家族の人生設計に「将来的な住み替え」「転勤」「資産形成」などがあるなら、有力な選択肢になり得ます。反対に「この家を長く住み続ける」「自由に改築したい」と考えているなら、従来型ローンのほうが安心かもしれません。
住宅ローンは人生における大きな決断のひとつです。今回ご紹介したような新しい方式も含めて、ライフプラン・資金計画・将来の見通しを十分に検討した上で、最適な選択をしてください。
※本記事は、報道された「残価設定型住宅ローン」に関する情報、および一般的な不動産・住宅ローンの知見に基づき解説しています。実際に利用を検討する際は、金融機関や住宅メーカーと条件を詳細に確認するようにしてください。

