2026年1月、東京商工リサーチ(TSR)が公表した「2025年 不動産業動向調査」によると、不動産業界は売上・利益ともに過去7年間で最高水準を記録しました。
一方で、休廃業や倒産は過去10年間で最多となり、業界内の二極化が急速に進んでいることも明らかになっています。
本記事では、調査結果をもとに、不動産業界の現状と課題、今後の展望について分かりやすく解説します。
不動産業の業績はコロナ禍以降で最高水準に
TSRの調査によると、売買を主力とする全国の不動産業6,090社の最新期(2024年7月期〜2025年6月期)の業績は、以下のとおりです。
- 売上高合計:17兆3,430億円(前期比7.9%増)
- 純利益合計:1兆3,063億円(同6.8%増)
- 純利益率:7.5%
売上・利益ともに、過去7年間で最高を更新しました。
コロナ禍で一時落ち込んだものの、その後は4年連続で増収となっています。
この背景には、
- 地価の4年連続上昇
- 実需(自己居住用)と投資需要の活発化
- 資材高騰などコスト増分の価格転嫁
といった要因があります。
大手4%が売上の約8割を占める「寡占構造」
今回の調査で特に注目すべきなのが、不動産業界における大手集中の進行です。
売上規模別の構造
- 売上高100億円以上
- 244社(全体の4.0%)
- → 売上高合計13兆4,198億円(全体の77.3%)
- 売上高5億円未満
- 4,397社(全体の72.2%)
- → 売上高合計 約4.9兆円(全体の2.8%)
社数では中小事業者が圧倒的に多いものの、売上の大半はごく一部の大手企業が占めている構図が鮮明です。
豊富な資金力と情報網を背景に、大手は優良物件を囲い込み、再開発や高付加価値化によって収益を拡大しています。
増収企業は4割超も、業績の「ばらつき」が拡大
最新期の売上高の増減をみると、次のような結果となりました。
- 増収:2,748社(45.1%)
- 減収:2,293社(37.6%)
- 横ばい:1,049社(17.2%)
増収企業が4割を超える一方で、減収企業も約4割近く存在し、業績のばらつきが広がっています。
特に目立つのは、
- 10~100%未満の増収:1,532社
- 100%以上の大幅増収:388社
といった急成長企業の存在です。
反面、緩やかな減収企業も多く、成長できる企業とそうでない企業の差が拡大しています。
黒字企業は8割超も、減益企業が4割に達する
利益面では、不動産業界は依然として高い収益力を維持しています。
- 黒字企業:5,173社(84.9%)
- 赤字企業:917社(15.0%)
ただし、黒字企業の割合は、
- 2期前:85.8%
- 1期前:85.3%
- 最新期:84.9%
と、緩やかに低下しています。
また、黒字であっても、
- 人件費の上昇
- 広告費・IT投資の増加
- 金利上昇による資金調達コスト増
などにより、減益となった企業が全体の約4割を占めており、収益格差はさらに拡大しています。
倒産・休廃業・解散が過去10年間で最多に
業界全体が活況を呈する一方、市場からの退出も急増しています。
2025年の市場退出状況
- 休廃業・解散:2,000社(前年比3.3%増)
- 倒産:136社(同32.0%増)
- 合計:2,136社(同4.7%増)
これは、過去10年間で最多の水準です。
特に倒産件数は、
2022年以前は年間90件未満でしたが、2023年以降は100件超で高止まりしています。
業界を取り巻く環境は「転換期」へ
不動産業界は現在、大きな転換期に差し掛かっています。
主な変化ポイント
- 投資過熱による不動産価格の高騰
- 金利上昇局面への移行
- 大手による優良物件の囲い込み
- 駅前店舗中心から、SNS・AI活用型営業へのシフト
従来型の営業スタイルに固執し、コスト上昇を価格転嫁できない事業者は、今後さらに淘汰される可能性があります。
まとめ|不動産業界は「成長」と「淘汰」が同時進行
今回の調査から分かる不動産業界の現状は、次の一言に集約できます。
「市場は好調だが、すべての企業が恩恵を受けているわけではない」
- 大手企業は売上・利益ともに拡大
- 中小事業者は厳しい競争環境に直面
- 業績・営業力・IT対応力による二極化が進行
今後、不動産業界で生き残るためには、
マーケットの変化を的確に捉え、柔軟に戦略を転換できるかどうかが、これまで以上に重要になりそうです。

