不動産取引において、登記制度は欠かせないルールです。宅建試験では「不動産登記法」から頻繁に出題されるため、制度の仕組みや各登記の種類、申請手続きの原則と例外などを体系的に理解しておくことが重要です。
この記事では、不動産登記の目的や構成、表題登記・権利登記・仮登記・登記の公開までを幅広く解説し、例題によって知識の定着もサポートします。


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不動産登記制度の目的と登記記録の構成
不動産登記制度は、不動産の所在・内容や権利関係を公示し、国民の権利保全と取引の安全を図ることを目的としています。登記簿(登記記録)は以下のように構成されています。
- 表題部:不動産の物理的現況(地番・地積・構造など)
- 権利部甲区:所有権に関する登記
- 権利部乙区:抵当権など所有権以外の権利の登記

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表示に関する登記と登記義務
表示に関する登記は物理的現況を公示するもので、対抗力はありませんが、以下のケースでは登記義務が課せられています。
表題登記の申請義務
- 新たに土地を取得した者:取得日から1か月以内に申請
- 新築建物や区分建物の原始取得者:新築日から1か月以内に申請
登記義務のある主な変更・滅失
- 建物の増築・地目変更:1か月以内に変更登記を申請
- 建物や土地の滅失:1か月以内に滅失登記を申請
なお、土地の合筆・分筆登記などは、義務ではありませんが所有者の申請に基づき行われます。
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権利に関する登記と所有権保存登記
権利に関する登記には対抗力があります。代表的なものが以下の通りです。

所有権保存登記
未登記の不動産に初めてなされる所有権登記です。申請できるのは以下の者です。
- 表題部所有者またはその相続人等の承継人
- 確定判決で所有権を確認された者
- 土地収用で取得した者
- 分譲業者から取得した者(区分建物)
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区分建物の登記と敷地権の取扱い
区分建物の構成と敷地権の登記
- 区分建物の登記記録は一棟全体+専有部分の表題部が一体で構成
- 敷地権の内容(割合・地番等)は専有部分の表題部に記載
- 土地の登記記録には「敷地権である旨の登記」がされ、職権登記
敷地権の種類によって、登記されるのは以下の区になります:
- 所有権:甲区
- 地上権・賃借権:乙区

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登記申請の原則と例外
共同申請主義
原則として登記は権利者と義務者の共同申請が必要です(例:売買による所有権移転登記)。ただし、以下のケースでは例外として単独申請が認められます。
- 所有権保存登記
- 相続・合併による移転登記
- 確定判決に基づく登記
- 氏名・住所の変更、更正登記
- 仮登記
- 所有権保存登記しかない不動産の抹消登記

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登記申請時の添付書類
権利に関する登記には以下の書類が必要です。
- 登記原因証明情報(売買契約書など)
- 登記識別情報(登記済証に代わる識別コード)
- 代理人による申請の場合、代理権限証明書類
なお、登記識別情報が提供できない正当理由があれば、省略も可能ですが、司法書士の代理申請のみでは正当理由とはなりません。

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仮登記とその効力
仮登記とは
本登記に必要な手続き・要件が未整備の状態で、将来の順位を確保するために行う予備的登記です。
- 仮登記には対抗力なし
- 本登記がなされた時点で、仮登記時点の順位を取得
仮登記ができるケース
- 登記識別情報が提出できない
- 予約完結権などに基づく将来の請求権を保全する場合
仮登記の本登記化には、利害関係人の承諾が必要です。
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登記の公開制度
誰でも以下の証明書を取得できます(有料)。
- 登記事項証明書:記録されている登記事項の全部または一部を証明
- 登記事項要約書:登記事項の概要を記載(※インターネット請求不可、窓口のみ)
また、地図・建物所在図なども写しを請求・閲覧可能です。

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実力確認!不動産登記に関する例題で復習
例題1:表題登記について誤っている記述はどれか?
ア.新たに土地を取得した者は1か月以内に表題登記を申請
イ.表題登記には対抗力がある
ウ.建物が滅失した場合は1か月以内に滅失登記を申請
エ.区分建物の表題登記は一括申請が原則
正解:イ
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例題2:所有権保存登記を単独で申請できる者はどれか?
ア.登記義務者
イ.原始取得者から買った者
ウ.区分建物の転借人
エ.抵当権者
正解:イ
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例題3:仮登記に関して正しいものはどれか?
ア.仮登記には対抗力がある
イ.仮登記後に本登記をすると順位は仮登記の時点になる
ウ.仮登記の本登記は誰でも申請できる
エ.仮登記に基づく本登記は単独申請不可
正解:イ

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まとめ
不動産登記法は、宅建試験で安定して出題される重要テーマです。特に以下の点を確実に押さえておきましょう。
- 登記記録の構成と各部の意味
- 表題登記と権利登記の違い、登記義務の有無
- 所有権保存登記の申請者と条件
- 区分建物の登記と敷地権の関係
- 登記申請の原則(共同申請主義)とその例外
- 仮登記の効力と本登記の順位保全
- 登記事項証明書と要約書の請求方法
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