宅建試験では売買や賃貸借以外の契約も出題対象であり、特に「贈与契約」と「使用貸借契約」は毎年のように狙われるポイントです。無償契約特有のルールや、借主・貸主の義務、契約の終了や解除のタイミングなど、細かい知識の整理が得点に直結します。
今回は、民法に基づくこれら2つの契約について、条文と判例の重要点を分かりやすく解説し、例題で理解を深めていきます。


⸻
贈与契約の基本的性質と成立要件
贈与契約とは、贈与者がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、受贈者がそれを受け取る意思を示すことで成立する契約です。
- 諾成契約(合意のみで成立)
- 片務契約(一方のみが義務を負う)
- 無償契約(対価の授受がない)
このため、契約の拘束力や義務の履行には独自の制限がかかります。

⸻
書面によらない贈与と解除の可否
原則として、一度成立した契約は当事者の意思で解除できませんが、書面によらない贈与については例外です。
- 書面でない贈与契約は、履行前の部分に限り各当事者が解除可能
- 不動産贈与では、登記または引渡しが済んでいれば「履行済」とされ、解除できません(判例)
⸻
贈与者の義務と契約内容の推定
贈与者には、贈与の目的物や権利を契約に適合した状態で引き渡す義務がありますが、その責任は限定的です。
- 特定物の贈与(例:中古車)では、契約時の状態で引き渡せばよく、契約不適合責任(担保責任)は負いません

⸻
特殊な贈与契約の種類とポイント
定期贈与
- 毎月または毎年一定額を渡す契約(仕送りなど)
- 贈与者または受贈者の死亡により効力を失います
負担付贈与
- 贈与と同時に受贈者に一定の債務(ローンなど)を負担させる契約
- 双務契約の性質を持ち、売主と同様の担保責任を贈与者も負います
死因贈与
- 贈与者の死亡を条件として効力が発生する贈与契約
- 遺贈との違いに注意(贈与は契約、遺贈は単独行為)
⸻
使用貸借契約とは?賃貸借との違い
使用貸借契約とは、貸主が物を無償で貸し、借主はその物を使用・収益し、契約終了時に返還する契約です。
- 諾成・片務・無償契約で、賃貸借契約とは明確に異なる
- 対価(賃料等)を伴わないのが最大の特徴
【例】土地を無償で駐車場として貸す場合など
⸻
契約の成立と貸主・借主の義務
成立要件
- 無償での使用・収益の合意があれば成立(引渡し前でも解除可能)
- ただし書面契約の場合は解除できない
借主の義務
1. 契約や物の性質に従った使用・収益
2. 貸主の承諾なく第三者に使用・収益させてはいけない
3. 通常の必要費(修繕費等)は借主が負担
4. 有益費については、貸主の選択で償還請求可能

⸻
使用貸借の終了と解除
契約の終了
- 期間が定められている場合:満了により終了
- 期間の定めがない場合:目的の使用・収益が完了すれば終了

契約の解除
- 目的に従って使用が完了した場合:貸主から解除可能
- 目的も期間も定めなし:貸主はいつでも解除可能
- 借主側は、いつでも解除可能(目的・期間の有無に関係なく)

⸻
使用貸借の相続と消滅時効
- 借主が死亡した場合 → 使用貸借は終了
- 貸主が死亡した場合 → 使用貸借は終了しない
貸主の損害賠償請求・費用償還請求の制限
- 返還を受けた日から1年以内に請求が必要
- この間は時効は進行しない(完成猶予)
⸻
実力チェック!例題で確認しよう
例題1:次のうち、書面によらない贈与契約に関して正しいものはどれか?
ア.履行済みの部分も解除できる
イ.不動産を贈与するには公正証書が必要である
ウ.履行済でない限り、当事者は解除できる
エ.贈与は全て無効にできる
正解:ウ
⸻
例題2:負担付贈与に関する説明として正しいものはどれか?
ア.贈与者は一切の担保責任を負わない
イ.売買契約に関する規定は適用されない
ウ.受贈者は無条件で贈与を受けられる
エ.贈与者は担保責任を負う場合がある
正解:エ
⸻
例題3:使用貸借において、契約終了後に損害賠償請求を行う場合の制限はどれか?
ア.返還から3年以内
イ.返還から1年以内
ウ.契約終了から2年以内
エ.時効は存在しない
正解:イ

⸻
まとめ
贈与契約と使用貸借契約は、どちらも「無償契約」であるがゆえに特有のルールが数多くあります。試験ではその違いや要件、例外が問われるため、次の点を確実に押さえておきましょう。
- 書面によらない贈与は履行前であれば解除可能
- 負担付贈与では売買契約に準じた担保責任が生じる
- 使用貸借は借主の死亡で終了、貸主の死亡では終了しない
- 使用貸借の解除・終了には目的や期間の有無が影響
- 契約不適合責任は原則負わないが、推定を覆せば発生する場合あり
⸻