宅建試験では、契約や物権と同様に「債権の消滅」に関する出題が頻繁にみられます。債権がどのような場合に消滅するのか、それぞれの制度の違いや適用要件を理解しておくことで、確実に得点を積み重ねることができます。
この記事では、債権の基本的な消滅原因である「弁済」から「混同」までを体系的に解説し、例題で理解度を確認できる内容に仕上げています。


弁済とは何か?債務を履行して債権が消える基本形
弁済とは、債務者が債権者に契約内容に従って給付を行うことをいいます。これにより債権が消滅します。
- 弁済は債務者以外でも可能(第三者の弁済)
- 弁済場所:特定物→所在場所、その他→債権者の住所
- 弁済費用:原則は債務者負担、ただし増加分は債権者負担
- 債務者は領収書を請求でき、拒まれた場合は弁済拒否可

弁済の提供と弁済拒否時の対応
弁済の提供とは、債務者が履行しようとしたにもかかわらず、債権者が受け取らない場合でも、債務者の責任を免除する制度です。
- 原則:現実の提供が必要
- 債権者が受領を拒んでいる場合:口頭の提供で足りる
- 契約否定など明確な拒否がある場合:口頭の提供も不要(判例)
第三者による弁済と弁済による代位
第三者も弁済できますが、正当な利益のない者が債務者や債権者の意思に反して弁済することはできません。
弁済による代位とは、弁済者が債権者に代わって債権や担保権を行使できる制度です。
- 正当な利益を有する者:連帯保証人・物上保証人など
- 対抗要件が必要なケース:債務者の通知または承諾が必要

代物弁済とは?物やサービスで債務を消す方法
代物弁済とは、本来の弁済に代えて、他の給付をすることによって債務を消滅させる方法です。
- 契約が成立した時点で所有権が移転
- 実際の給付が行われた時点で弁済と同様の効力が発生
- 不動産の場合は登記、動産の場合は引渡しが必要
供託とは?債権者が受け取らないときの救済手段
供託とは、債権者が弁済を受け取らない場合や不明な場合に、供託所に金銭等を預けることで弁済と同様の効果を発生させる制度です。
- 受領拒否、受領不能、債権者不確知のときに可能
- 供託により債務は消滅
- 還付が行われると債権者は受領可能
相殺とは?互いの債権債務を帳消しにする方法
相殺とは、債務者が債権者に対して債権を有している場合に、それを差し引いて消滅させる制度です。
- 単独行為で可能、条件や期限を付けることは不可
- 相殺適状:双方の債務が同種・弁済期にあることが必要
- 受働債権の期限前でも、自働債権の債務者が放棄すれば可能
相殺できない例:
- 同時履行の抗弁権がある場合
- 悪意の不法行為による損害賠償債務
- 差押え後に発生した債権による相殺

その他の債権消滅事由も押さえよう
更改
契約によって新たな債務を発生させ、従前の債務を消滅させる制度です。
- 給付内容・債務者・債権者の変更が対象
- 債権者の変更では確定日付ある証書が必要(対抗要件)
免除
債権者が一方的に債権の全部または一部を放棄する意思表示をすることにより債権が消滅します。
混同
債権者と債務者が同一人になった場合、債権は消滅します。ただし、第三者の権利が設定されている場合は消滅しません。

実力確認!例題でチェック
例題1:次のうち、弁済による代位が認められる者は誰か?
ア.債務者の友人で、弁済に正当な利益のない者
イ.連帯保証人
ウ.債権者の同意を得ていない物上保証人
エ.弁済を禁じられた第三者
正解:イ

例題2:次の供託が認められるのはどれか?
ア.債権者が行方不明で連絡が取れない
イ.弁済する資金がないとき
ウ.弁済期がまだ到来していないとき
エ.第三者から弁済を勧められたとき
正解:ア
例題3:次のうち、相殺が許されないケースはどれか?
ア.債務者の債権が期限前である
イ.悪意の不法行為による損害賠償債務との相殺
ウ.貸金債権による相殺
エ.債権者の債権が消滅時効にかかっている
正解:イ

まとめ
宅建試験では、債権の消滅に関する基本的な制度だけでなく、判例に基づいた例外的な処理もよく出題されます。以下の点は特に重点的に学習しておきましょう。
- 弁済と代物弁済の違い、第三者による弁済と代位の要件
- 供託が認められる3つのケース
- 相殺の可否、相殺適状、禁反言的な制限の理解
- 更改・免除・混同といったその他の消滅事由の適用範囲
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