宅建試験では、不動産取引に関連する公的機関の役割や制度も頻出テーマの一つです。中でも「住宅金融支援機構」に関する問題は、住宅ローン制度や社会的な住宅支援策との関連でよく出題されます。
この記事では、住宅金融支援機構の設立背景から主要業務である証券化支援業務(フラット35)まで、試験に出やすいポイントを例題と共にわかりやすく解説していきます。


住宅金融支援機構とは
住宅金融支援機構は、平成19年4月に廃止された住宅金融公庫の業務を引き継ぐ形で設立された独立行政法人です。
- 所在地:日本国内
- 設立目的:民間金融機関の住宅ローン供給を補完し、国民の住宅取得を支援する
- 主力商品:「フラット35」=全期間固定金利型住宅ローン
「フラット35」という名称は、証券化支援業務によって供給される住宅ローンの商品名であり、機構単体ではなく、民間金融機関との提携によって提供されています。

機構の主要業務と直接融資の原則
住宅金融支援機構は原則として直接融資を行いません。ただし、次のような社会的必要性の高いケースでは例外的に直接融資を実施します。
例外的な直接融資の代表例
- 災害復興のための住宅再建・補修
- 災害予防に伴う移転・耐震改修
- 高齢者向けバリアフリーリフォーム(60歳以上)
- 子育て世帯・高齢者世帯向け賃貸住宅の建設
- 財形住宅貸付制度に基づく融資

証券化支援業務(買取型)の仕組み
証券化支援業務とは、民間金融機関が貸し出した住宅ローン債権を、機構が買い取り、それを証券化して投資家に販売する仕組みです。
利点と目的
- 民間金融機関にとっては、貸倒リスクや金利上昇リスクを軽減できる
- 借り手にとっては、全期間固定金利の住宅ローン(フラット35)を利用できる
- 対象:自己居住用住宅、親族の居住用住宅、新築・中古どちらも対象
対象外の例
- 賃貸住宅の購入資金にかかる住宅ローン債権は対象外
フラット35の特徴と返済方式
フラット35は、機構と金融機関の共同提供で、最長35年の固定金利が特徴の住宅ローンです。
- 金利は金融機関が個別に設定(機構が一律に決定するわけではない)
- 元利均等返済・元金均等返済の選択が可能
- 一部繰上返済も可能(条件あり)
証券化支援業務(保証型)とは
保証型は、金融機関が証券化した住宅ローン債権に対し、機構が債務保証を行う仕組みです。ただし、実務上は現在、ほぼ買取型のみが実施されており、保証型は出題頻度が非常に低いとされています。
証券化支援業務以外の業務
住宅金融支援機構が行う業務には、以下のようなものも含まれます。
1. 住まいに関する情報提供
国民に対する住宅取得・リフォーム等に関する各種情報の発信
2. 住宅融資保険業務
民間金融機関の住宅ローンが回収困難となった場合に、機構が保険金を支払う信頼補完制度
3. 団体信用生命保険(団信)業務
住宅ローン債務者が死亡または重度障害となった際に、残債を保険でカバーする制度

高齢者向けリフォーム融資の特例
高齢者の居住する住宅のバリアフリー化や耐震改修に際し、特例的な返済制度が存在します。
- 対象者:60歳以上の本人が居住する住宅
- 内容:元金は本人死亡時に一括返済、月々の支払いは利息のみ
- 死亡時とは:本人と連帯債務者のすべてが死亡したとき
業務の委託とその範囲
機構の業務のうち、以下の5項目は民間等に委託可能です。
- 債権の元金回収
- 直接融資業務
- 団信保険の弁済
- 建築物の審査(工事・規模・規格)
- 構造計算の審査

実践例題で知識を定着
例題1:次のうち、証券化支援業務(買取型)の対象とならない住宅ローン債権はどれか?
ア.自己居住用の中古住宅購入資金
イ.親族の住む住宅建設資金
ウ.新築住宅と借地権の取得を伴う資金
エ.賃貸住宅の購入資金
→ 正解:エ
例題2:フラット35に関する記述で誤っているものはどれか?
ア.最長35年の全期間固定金利型ローンである
イ.金利は各金融機関が個別に設定する
ウ.証券化支援業務により機構が直接融資する
エ.元利均等返済と元金均等返済のいずれかを選べる
→ 正解:ウ

まとめ
住宅金融支援機構は、宅建試験において「住宅ローン」や「社会的住宅支援」に関する知識として重要な位置を占めています。
- フラット35=機構と金融機関による全期間固定金利型ローン
- 原則、機構は直接融資を行わない(例外に注意)
- 保険業務・情報提供・信頼補完など多岐にわたる業務がある
- 委託業務の内容も問われやすい
フラット35や高齢者向け融資の返済特例など、実生活にも直結する内容が多いため、理解しておくと試験対策だけでなく、今後の実務にも活きてきます。
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