借家権(建物賃借権)は宅建試験において民法・借地借家法双方の知識が問われる重要テーマです。とくに更新のルールや正当事由、対抗力の要件、譲渡・転貸に関するルールなどはひっかけ問題も多く、確実な理解が得点に直結します。
この記事では、借家権の基本構造から契約更新、対抗要件、転貸の通知ルールまで、頻出論点を例題とともにわかりやすく解説していきます。


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借家権とは?建物賃貸借契約に適用される特別ルール
借家権とは、建物を賃借する権利で、借地借家法の対象です。無償の使用貸借契約には適用されません。借家契約においては、借主を保護するため、民法の原則に加えて借地借家法による特別な規定が多数設けられています。

適用除外:一時使用目的の契約
- 夏季・冬季の別荘など、明確な一時使用目的がある場合は、借地借家法の適用なし
- 民法の規定に従って処理され、口頭契約でも成立します
強行規定の扱い
借地借家法の多くは借主保護のための強行規定であり、借主に不利な特約は無効になります。例外的に、造作買取請求権の排除など一部の不利な特約は有効です。

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借家契約の存続期間と更新ルール
存続期間
- 民法では賃貸借期間の上限は50年ですが、借地借家法にはこの制限がなく期間は無制限
- 借地借家法では、1年未満の期間を定めた契約は、期間の定めのない契約とみなされます
※例外:定期建物賃貸借契約(定期借家契約)では1年未満でも有効

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契約の更新(期間の定めがある場合)
契約期間満了の 1年前から6か月前 までに、更新しない旨または条件変更の通知(更新拒絶通知)をしなければ、自動的に更新されたとみなされます。
更新後は「期間の定めのない契約」となります。
更新拒絶の要件
賃貸人が更新を拒絶するには、「正当事由」が必要です。
正当事由の判断要素:
- 当事者双方の建物使用の必要性
- 賃貸借契約の経過
- 建物の利用状況・現況
- 財産上の給付(立退料)の有無など
これらを総合的に判断し、立退料の提示だけでは正当事由にはなりません。

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契約の終了(期間の定めがない場合)
- 賃貸人が解約申入れ → 6か月後に終了(正当事由必要)
- 賃借人が解約申入れ → 3か月後に終了(正当事由不要)
さらに、終了後も使用が継続している場合に賃貸人が遅滞なく異議を述べなければ、契約は更新されたとみなされます。
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借家権の対抗力と第三者への主張
原則:登記があれば対抗できる
借家権の登記があれば、第三者に対してその権利を主張できます。しかし、賃貸人に登記協力義務がないため、実務では困難です。
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特例:建物の引渡しで対抗できる
借地借家法では、建物の引渡しがあれば、登記がなくても借家権を第三者に対抗できます。
判例のポイント:
- 転借人が占有している場合でも、元の賃借人が引渡しを受けたとみなされ、借家権は保護される

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借家権の譲渡・転貸と裁判所の関与
借家権の譲渡・転貸には、民法と同様に賃貸人の承諾が必要です。
借地権との違いに注意!
- 借地権:裁判所の許可制度あり
- 借家権:裁判所の許可制度なし
この違いは試験でも頻出のひっかけポイントです。
無断譲渡・転貸の扱い
- 原則として解除原因となります
- ただし、信頼関係破壊がないなどの特段の事情がある場合は解除できない(判例)

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転借人の保護と通知義務
建物の転貸借がされているとき、元の借家契約が期間満了または解約申入れで終了する際には、賃貸人が転借人に対して通知を行わなければ、終了を対抗できません。
- 通知がなされた場合 → 6か月後に転貸借も終了
- 債務不履行による解除の場合 → 通知不要。即時対抗可能
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実力チェック!例題で確認しよう
例題1:借家契約の更新に関する記述で正しいものはどれか?
ア.立退料を支払えば必ず更新拒絶が認められる
イ.契約終了後も借主が使用を続けていても更新されない
ウ.更新拒絶には正当事由が必要
エ.1年未満の賃貸借契約は、借家契約自体が無効になる
正解:ウ
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例題2:借家権の対抗要件に関する記述で正しいものはどれか?
ア.借家権は登記がないと第三者に対抗できない
イ.建物の引渡しがあれば登記なしでも対抗可能
ウ.登記がなければ転借人にも対抗できない
エ.建物が引き渡されても転借人が占有すると保護されない
正解:イ
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例題3:借家権の譲渡・転貸について正しいものはどれか?
ア.裁判所に申し立てれば譲渡は認められる
イ.無断譲渡でも信頼関係が破壊されなければ解除されないことがある
ウ.借地権と同様に転貸にも裁判所の許可が必要
エ.転貸後の契約終了には通知は不要である
正解:イ

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まとめ
借家権は宅建試験で定番の出題分野です。以下のポイントを重点的に確認しておきましょう。
- 契約期間が1年未満の借家契約は、期間の定めがない契約とみなされる
- 更新拒絶や解約には「正当事由」が必要(賃貸人側)
- 対抗要件として建物の引渡しがあれば登記は不要
- 借家権には裁判所の許可制度は存在しない
- 転貸借の終了には転借人への通知が必要