借家権は宅建試験の中でも頻出のテーマです。とくに普通借家契約と定期借家契約の違いや、借賃増減請求権、造作買取請求権、借家契約終了後の同居者保護など、条文の細かい理解と判例知識の両方が問われます。
本記事では、宅建試験対策で必須の重要論点を体系的に解説し、例題を通して理解を深めます。


借賃増減請求権のルールと制限
建物の借賃が経済事情の変動等によって近隣の建物と比較して不相当となった場合、貸主は増額を、借主は減額を請求できます。
主なポイント
- 契約条件にかかわらず請求可能(将来に向かって効力)
- 定期借家契約では、特約があればこの請求はできません
- 増額請求しない特約は有効、減額請求しない特約は無効(借主不利のため)

調停前置主義
当事者間で協議が調わなければ、いきなり訴訟には移れず、まずは調停手続が必要です。
精算の仕方
協議が調わず、後日裁判で正当と判断された場合:
- 請求した日から差額分を支払う(年1割の利息をつけて)
- 後日精算方式で解決されます

借家契約終了時の造作買取請求権
借主が貸主の同意を得て建物に取り付けた畳や建具などの「造作」について、借家契約終了時にその時価で買い取るよう請求できる権利です。
適用されるケース
- 普通借家契約(期間の有無に関係なし)
- 承諾付きの転借人にも適用あり
- 貸主から買い取った造作でもOK
適用されないケース
- 一時使用目的の借家契約
- 債務不履行による解除時(判例)
任意規定
この請求権は任意規定のため、契約で排除することが可能です。
借地上の建物賃貸借と借地権の消滅
借地権の存続期間が満了すると、原則として土地の明渡しが必要になりますが、以下のような借主保護の制度があります。

明渡期限の猶予制度
借家人が1年前までに借地権の終了を知らなかった場合に限り、裁判所は借家人の請求により、知った日から1年以内で明渡し猶予を認めることができます。
- 事業用定期借地権にも適用あり
- 建物譲渡特約付借地権には適用されない(地主が賃貸人地位を承継するため)
同居者の保護と借家権の承継
相続人がいない場合
- 内縁の妻や事実上の養子など、相続人がいないときに同居していた者が、借家権を承継します
- 1か月以内に借家権を放棄する意思を表明すれば承継しない
相続人がいる場合
- 相続人がいても、内縁の妻などが居住権を主張することが可能(判例)
- 相続人による明渡請求が権利の濫用と判断されることもある
定期建物賃貸借契約(定期借家契約)の要件
普通借家契約と違い、更新がないことを前提にする契約が定期借家契約です。
要件・方式
- 期間の定めがあること(1年未満も可)
- 書面による契約(電磁的記録でも可)
- 契約書とは別の書面で更新がないことを説明する必要がある
【注意点】
- 書面交付がなければ、更新なしの特約は無効になります(判例)
- 利用目的に制限はありません(居住用・事業用問わず)

定期借家契約の終了と特別ルール
賃貸人による終了通知義務
- 期間が1年以上の場合:
終了の1年前から6か月前までに通知が必要 - 通知がなければ終了を主張できない
- 通知が遅れた場合でも、通知日から6か月後には終了を主張可能
賃借人の中途解約
- 200㎡未満の居住用建物について、転勤・療養・介護などのやむを得ない事情があれば、1か月前の申入れで中途解約可能
- 賃借人に不利な特約は無効

取り壊し予定建物における特約の有効性
法令や契約により取り壊しが予定されている建物の賃貸借契約においては、「取り壊しのときに終了する」特約を結ぶことができます。
- 書面によって特約を定めなければ無効
- 書面の代わりに電磁的記録でも可
実力チェック!例題で理解を深めよう
例題1:借賃増減請求に関して正しいものはどれか?
ア.経済事情に関係なく請求はできる
イ.調停なしで裁判請求できる
ウ.増額請求は1割を限度とする
エ.減額しない旨の特約は無効となる
正解:エ

例題2:造作買取請求権が認められるのはどれか?
ア.借主が建物を無断で改造した場合
イ.債務不履行で解除された場合
ウ.賃貸人の同意を得て設置された造作
エ.転借人が無断で設置した場合
正解:ウ
例題3:定期借家契約に関する記述で正しいものはどれか?
ア.公正証書でなければならない
イ.1年未満の契約は無効である
ウ.別書面で更新がない旨の説明が必要
エ.終了の通知は不要である
正解:ウ
まとめ
借家契約に関する法的知識は宅建試験において避けて通れない重要分野です。今回のポイントをしっかり押さえておきましょう。
- 借賃の増減は双方から請求可能だが、調停を経る必要あり
- 造作買取請求権は承諾付き転借人にも認められるが、解除時は不可
- 定期借家契約は書面交付と説明義務を怠ると、特約は無効になる
- 建物取り壊し特約には必ず書面が必要
- 同居者や内縁の配偶者にも法的保護がある
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