賃貸不動産経営管理士試験において、「消防法」と「計画修繕」は頻出分野です。建物の安全を守るための消防用設備の設置義務や、防火管理者の選任基準、そして賃貸経営の安定に直結する修繕計画・履歴情報管理は、試験対策だけでなく実務でも極めて重要です。この記事では体系的に整理し、例題を交えて解説します。
消防用設備等の設置義務とは
消防法17条1項により、防火対象物(学校、病院、工場、百貨店、旅館、飲食店、共同住宅など)の所有者・管理者・占有者は、政令で定める技術基準に従い、消防用設備等を設置・維持しなければなりません。
消防用設備等は大きく以下に分類されます。
- 消火設備
- 警報設備
- 避難設備
- 消防用水・消火活動上必要な施設
共同住宅では「火災の感知 → 報知 → 消火 → 避難 → 消防活動支援」まで一連の流れを可能にすることが設置目的です。

消防用設備の分類と基準
消火設備
- 消火器:延べ面積150㎡以上で設置義務
- 屋内消火栓:耐火建築物で延べ面積2,100㎡以上
- スプリンクラー:11階以上に設置
- 機械式駐車場:不活性ガス消火設備や泡消火設備を設置
👉 消火器は「ABC粉末消火器」が万能。住宅用は5年、業務用は10年が交換目安。

警報設備
- 自動火災報知設備:500㎡以上
- 漏電火災警報器:150㎡以上
- 消防機関通報装置:1,000㎡以上
- 非常警報設備:収容人員50人以上(無窓階20人以上)
👉 戸建や小規模共同住宅には「住宅用火災警報器」が必須。

避難設備
- 避難はしご・救助袋・緩降機:2階以上で収容人員30人以上
- 誘導灯・誘導標識:地階、無窓階、11階以上のフロアには誘導灯を設置

特定共同住宅等における特例(緩和措置)
消防法施行令29条の4では、特定の構造を持つ共同住宅(例:二方向避難型、開放型)では、通常の消防設備の代わりに「共同住宅用スプリンクラー」「住宅用消火器」などの代替設備で足りる場合があります。
👉 出題ポイントは「二方向避難型」「開放型」などの定義を正しく理解することです。
防火対象物と防火管理者
防火対象物は大きく2分類:
- 特定防火対象物:百貨店、旅館、病院など(多数の人が出入り)
- 非特定防火対象物:共同住宅、学校、工場など
👉 共同住宅は非特定防火対象物です。ここを取り違えないようにしましょう。
また、共同住宅で収容人員50人以上の場合、防火管理者を選任する義務があります。
防火管理者の業務:
- 消防計画作成
- 訓練実施
- 設備点検・整備
- 火気の管理
- 避難経路や収容人員の管理
資格は「甲種」「乙種」があり、延べ面積や建物用途によって必要資格が変わります。

計画修繕の重要性
建物は使用の有無に関わらず劣化します。賃貸経営を安定させるには、計画修繕を行うことが必須です。
長期修繕計画の特徴
- 対象期間はおおむね30年
- 数年に一度見直しが必要
- 修繕費用の積立が必須
代表的な修繕周期
- 外壁塗装:12〜18年
- バルコニー防水:12〜18年
- シーリング工事:8〜16年
- 鉄部塗装:4〜6年
- 排水設備:24〜36年
👉 試験では「修繕周期」の数字が狙われやすいです。

修繕履歴情報の活用
修繕履歴は「建物カルテ」のようなもの。
メリットは以下の通りです。
- 維持管理コストの削減
- 合理的なリフォーム
- 敷金精算や原状回復トラブル防止
- 物件売買時の価格評価
- 災害復旧の迅速化
- 設備不具合時の更新作業の円滑化
👉 所有者に帰属しますが、管理業者が保管・活用するのが望ましいとされます。

例題演習
例題1(消防設備)
共同住宅で延べ面積200㎡の建物には、次のうち設置が義務付けられる消防用設備はどれか。
- スプリンクラー設備
- 消火器
- 屋内消火栓
- 自動火災報知設備
解答:2(消火器)。150㎡以上で設置義務がある。
例題2(防火管理者)
収容人員60人の共同住宅において、防火管理者を選任しなければならない。〇か×か。
解答:〇。共同住宅は非特定防火対象物だが、収容人員50人以上で防火管理者が必要。
例題3(長期修繕計画)
外壁塗装工事の修繕周期として適切なのはどれか。
- 3〜5年
- 8〜10年
- 12〜18年
- 30年以上
解答:3。外壁塗装は12〜18年ごとが目安。

まとめ
消防法と計画修繕は、数字・基準・定義が多いため暗記分野と思われがちですが、背景にある「建物の安全確保」と「安定的な賃貸経営」の意義を理解すると記憶に残りやすくなります。
賃貸不動産経営管理士試験では、今回解説した「面積・人員数による基準」「共同住宅が非特定防火対象物である点」「長期修繕計画の周期」などが狙われやすいので、例題を繰り返し解きながら定着させていきましょう。
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